「女性の積極登用」「働くママの活躍」が至上命題となっている現代日本。まさに今バリバリ働いていて、結婚後・出産後にもなおキャリアアップできるよう、将来を見据えて行動しているという女性も少なくないだろう。
もちろん、男女が分け隔てなく力を発揮できる社会を目指すのは大事なことであり、そのための制度づくりが進められるのは当然だが、一方で、多様な価値観、生き方が認められることも、これまた大事ではないか。
女性の中には、たとえば実際に出産してみてすっかり仕事に対する野心がなくなってしまったという人も、けっこういるらしいのである。
だんだん仕事が二の次に
Q&Aサイト「発言小町」に、「子育て中に出世欲が消え失せた自分を考える」というトピックが立てられた(2016年6月11日)。
「もともと出世欲とか野心が強いほう」という投稿者。産後はベビーシッターや家事代行を頼み、子供が2歳の頃までは保育園の迎えや家事を夫とどう分担するかで「いつもピリピリ」していたそう。
しかし「子供が3歳、4歳となってくると、赤ちゃんの頃よりも親の存在が大事になってきた気がして、だんだん仕事は二の次になり」、定時で帰れないような職場だったため、勤続10年以上のキャリアを捨てて転職。年収は減ったが残業はなし、プレッシャーも少なく、「結果として私も家庭も精神的にはとても安定しました」。
「同期の中で一番に昇進したい!」「何を犠牲にしてもこの案件をやりとげる!」というような野心がまったくなくなり、「時々自分が不思議になります」というほど変わったという。
「出産前と変わらず偉くなりたい!上昇したい!という野心を持ち続けられた方いらっしゃいますか」と、コメントを求めている。
加齢で意欲が減退する?
結果から言うと、投稿者が呼びかけた「出産前と野心は変わらず」だった女性は少なく、コメント欄には「同じです!」などと共感を示す声が目立つ。
「出世欲が消えた」という女性の一人は、その原因を次のように列挙する。
「1.悪阻(かなりキツかった)と赤ちゃんのお世話で、自分の気力と体力でどうにもならないことがあると学んだ。2.私は誰かから必要とされたかった。今まではそれが職場だったけど、今は子供が私のことを必要としてくれるからそれに応えたいと思うようになった。3.出世したワタシ、よりも仕事と家庭を両立しているワタシ、の方が幸せな気がした」
また、小さな店を営みながら子育てをしているという別の女性は、
「小さい頃はできるだけそばにいてやりたいし、小学校に入るとスポ少やら習い事の送迎で仕事に集中できないし、中学生になったら送迎は減りましたが(うちの学校はスクールバスがあるので助かってる)、今度は自分の体力が落ちています。本当は中学生になったら今のお店をもう少し手広くと思ってたのですが、なんだか自分自身が思っていた自分と違って、すっかり保守的になってるのです。体力的な問題と、やはりまだまだ子供に手がかかるんですよね。運動部で毎日腹ペコで帰って来る息子にお腹いっぱいおいしいものをと思うと残業できないし」
と自己分析している。
40代独身の女性も、「加齢のためか、だいぶ意欲が衰えてきました」といい、
「自分の実感では、キャリアって上がりだすとその勢いでグングン行くんだけれど、それまでの力を蓄積している期間が長いので、勢いが発現する前に、キャリア意欲が減退してしまうと、それに乗り損ねる面もあるのではないかと思います」
それぞれのコメントを読んだ投稿者は、自分の野心の消失について「端的に言うと、満足してしまったんだと思います。この程度で満足できるくらいの目標しかもともと掲げてなかったんだなと」わかった気がした、と書き込みつつ、締めくくりには、
「うーん。なんだか人生、もったいない気がします。もっと、大きな夢とか理想とかに向かって進んでいきたかったな。仕事を通じて」
と、押し込めていた埋み火が一瞬、かっと燃えさかったような感想を書き記している。(MM)