前回に引き続き、NPO「マタハラnet」代表の小酒部さやか氏に話を聞く。
ここまで、現在なおマタハラ被害者が相談窓口に至る例はごく少数という実情や、職場で被害者が孤立しやすい状況を紹介していただき、一つの司法判断が行政や立法に対策を促したこと、職場ではまず管理職の意識改革が求められ、企業としても問題上司を放置しないなどが課題とされている現状などについて聞いた。続きを伺おう。(新田龍)
答えはそれぞれが見つける
新田:組織内に、マタハラのようなコンプライアンス的にまずい状態が放置されているのは、企業にとって明らかにリスクですね。早急な変革が求められるところですが、「意識改革しよう」と掛け声は勇ましくても、では具体的に何から手をつけていくか、となると効果的なアイデアが出ず、立ちすくんでいる感じがします。
小酒部:すべての組織に有効な「ただひとつの正解」はありません。それぞれ試行錯誤しながら、自分たちで、自分たちに合った答えを見つけることが重要です。かぎは従業員が握っています。管理職が従業員と数多くコミュニケーションを重ねることで風通しがよくなり、両者のそれぞれが日々やっていることに対して自信を抱け、信頼関係も築けるようになるのです。「当たり前にできているレベルが高い」とか、「『言っていること』と『やっていること』が合致している」といった要素も重要です。
新田:小酒部さんたちの活動が、短期間にこれほどの実績を残されたわけですが、そもそもどのようなビジョンや戦略がおありだったのでしょうか。
小酒部:マタハラnetを立ち上げた当初から、メインストリームを目指していました。政府の有識者として招かれることも目標のひとつとしてやってきたので、現状に対しても批判的、対立的なスタンスをあえてとらないようにしてきました。マタハラにまつわる裁判の判決とタイミングが合ったことも大きかったです。結果的に厚労省の通達につながりましたから。政府や行政のトレンドに合わせて、彼らの動きにぶつけて活動すれば、メディアも取り上げてくれます。
新田:なるほど。私の場合は、最初から批判ばかりで嫌われ役を自認してましたから、そもそも大きな違いがあったんですね。勉強になります。