右も左もよく分からない新社会人にとって、仕事についても会社についても勉強したり、覚えたりしなければならないことだらけのこの時期。ただでさえ忙しいのに、「従業員持株会」への入会まで持ちかけられて、「ンもう、どうしたらいいのっ?」と浮き足立っているルーキーも見受けられるようだ。そんな一人がネットのよろず相談室に駆け込んだ模様。事情を聞いてみよう。
入らないといけない雰囲気で
Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」に寄せられたのはこんな相談(2016年4月9日)。
入社して1週間の合宿研修があったそうだが、その最後に人事から「自社の持ち株会社の会に所属し、毎月何口か買うよう伝えられました」。
購入費用は給料からの天引きで、「入らない」という選択肢もあったそうだが、「入らないといけないような雰囲気」だったとのこと。
人事には「貯金にもなるし良い」と勧められたというが、そもそも従業員持株会がどのようなものなのかが、あまりよくわかっていない様子の投稿者。
「やはり入会して株を買うべきでしょうか? 自分の立場だったら買いますか?」 と、意見を求めた。
回答者からは、
「株主であれば、株主総会に参加する権利が与えられます。自分の会社の危機に直面したとき、もしあなたにも関係があることが変わる恐れがあったとき、自分の発言権があったほうがいいと思いませんか?」
など、「入会すべきだ」という意見が多く寄せられた。ほかには、
「その持株会の条件に会社の奨励金はありますか? あるようなら絶対にお勧めします 財形貯蓄代わりになりますよ。奨励金が無い場合は時期を見て申し込むと良いでしょう」
と、従業員が株を買うとその金額の何割かを給付するような奨励金制度があるならよいのでは、とのアドバイスも。一方、
「リスクが高いから買わないほうが良いですよ。株価が下落したら? 上場廃止になったら? 新株発行して希薄化したら?」
と、慎重を促す書き込みもあった。
ここは無難に
新入社員のみならず、こうした持株会に入会する意味について、あまりよくわかっていないという人も少なくないと思われるので、ここでちょっとお勉強を。
福岡の「杉野泰雄公認会計士事務所」のサイトに掲載されている「従業員持株会のまとめ」によると、従業員が持株会に入るメリットについて
「市場の預金金利以上の配当を実施することによる従業員の財産形成ができる。中途退職しても会社が倒産しないかぎり元本は回収できる」
「従業員の会社に対する帰属意識や経営参加意識が高まる」
の2点を挙げ、デメリットとしては、
「会社が倒産すると元本の回収もできなくなる」
「業績がよくなければ配当も約束されない」
「株式投資のようなキャピタルゲイン(資産価値の上昇による利益)はない」
「持株会に参加している人と参加していない人との間で不公平感が生じ、勤労意欲に影響を与えることがある」
の4点を挙げている。
こうした点を踏まえて入るか入らないか判断すればよいのだろうが、入社したての新人に自己責任を求めるというのも、少々酷ではないか。
前出の「知恵袋」の回答にあった、
「人事評価もあるでしょうから、最小口入るのが賢いと思います」
という消極策が、無難な「おとなの」選択かもしれない。(MM)