政府は、2017年度中に「待機児童ゼロ」を目指し、今後、20万人分の受け皿を増やそうとしています(厚生労働省「待機児童解消加速化プラン」資料より)。ところが、ハコ=保育園を作っても、働く人=保育士が集まらない。読売新聞が今(2015)年5月、全国の主要自治体にアンケートを行い、「待機児童解消への課題」を複数回答で答えてもらったところ、トップは「保育士が集まらない」(64市区町村)。保育士不足は、かなり深刻なようです(2015年7月5日付朝刊)。
保育士資格をもちながら、保育士として働いていない『潜在保育士』は、全国に60万人とも70万人ともいわれ、彼女(彼)たちにどうやって「保育の現場に戻ってきてもらうか」が、喫緊の課題。筆者の周りにも、何人かの「潜在保育士」がいるのですが、彼女たちはなぜ、退職したのでしょうか。再び、保育士として働く意思は、どれくらいあるのでしょうか。赤裸々な声を集めてみました。
「責任が重すぎる」
「責任が重すぎるから」と答えたのは、以前、このコラムでも取り上げた、今はキャバクラ嬢の真奈美さんです(「介護士や保育士が、キャバクラ嬢になる理由」2014年11月7日)。彼女にとっては、子どもの命を預かる責任感や、親からのプレッシャーが重荷だったといいます。同じ対人関係の仕事なら、「大人相手」のキャバ嬢の方が、責任感は少ない。お店によってはサービス残業を強いられることもないため、「時間的にもラク」とも・・・。
「いやいや、責任感は別にいい。それより、女同士の人間関係がキツかった」と言うのは、筆者の同級生、サトミです。彼女は、ある短大を卒業後、「やっぱり子どもが好きだから」と、保育士の専門学校に入り直した経歴の持ち主ですが、わずか1年で辞めてしまいました。「やっぱり、女だけだから、色々あって・・・」と、言葉を濁すサトミ。彼女はその後、百貨店の受付などを経て、現在は2児の母です。そういえば、彼女は「結婚したら早く子どもがほしい」と、言っていました。元々子ども好きだからこそ、保育士になったわけですし、しばらくは母親業に専念したいという気持ちも分かります。