お客様は神様、クレームは宝の山――企業でよく使われるフレーズである。たしかに、クレームはサービス向上や商品開発に役立てられる。しかし、企業が目指す顧客満足を逆手にとって、やりたい放題をするモンスターがいるのも事実だ。
一見、真面目そうな人でも、土下座などの理不尽な謝罪を求めるモンスターに変身する人は少なくない。私はこうした人たちを「ホワイトモンスター」と名付けている。
「ホワイトモンスター」予備軍
講演やセミナーで各地を回っていると、「不満」というガスを溜め込んでいる人々が全国津々浦々にいることがわかる。彼らは、いつモンスターになってもおかしくないが、じつはハリセンボンが外敵から身を守るために体を膨らまし、刺を逆立てるように、精一杯の虚勢を張っている。
現状に100%満足している人は、まずいない。多かれ少なかれ、自分の将来について不安を感じていたり、社会や組織、人間関係に不満を抱いていたりするはずだ。それが怒りや嫉妬といった負の感情と結びつくと、やがて心のタガが外れてしまう。
たとえば都会のラッシュアワーでは、サラリーマンが「ひたひたと押し寄せる不安」や「爆発寸前の不満」を抱えながら、諦め顔で先を急いでいる。私には、彼らがモンスター予備軍に見えてしかたがない。