「TOEIC900点ないと門前払い」 そんな時代が来る前にチャンスを活かす

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   3回にわたってお送りしていた英語力シリーズですが今回でおわり、と同時に今年の連載も最後になります。

   今回は、海外駐在に求められる英語力と、チャンスについて考えてみたいと思います。

   海外駐在員に求める英語力はどのくらいだと思いますか?

   もちろん企業によって違うのですが、その数字が余りに低いのでびっくりしました。

「最低限のコミュニケーション」レベルで海外赴任OK

「日常会話や業務を英語でこなせる」レベルが当然に?
「日常会話や業務を英語でこなせる」レベルが当然に?

   例えば、英語をつかって世界で活躍するといえば、誰もが真っ先に思いつくのが、商社のイメージでしょう。しかも、総合商社となれば、英語でバリバリ仕事をしているイメージがあるとおもいます。

   住友商事、双日、丸紅、三井物産、三菱商事、伊藤忠商事

   これらの商社が海外赴任の条件としてあげているTOEICの点数はどのくらいでしょうか?

   900点?950点?

   いえ・・・730点です。(伊藤忠商事は700点としています)

   正直、ハードルが低いと感じました。正直、730点というと、ほんとにそこそこの英語力です(必ずしも最新の数字ではないかもしれませんが)。

   本来、「日常会話や業務を英語でこなせる」レベルはTOEIC900点とされています。

   しかし、総合商社ですら求められるレベルが700点程度。TOEIC700点というのは、「仕事や海外で最低限のコミュニケーションがとれる」レベル。

   さらに、キヤノンなどでは、さらに条件がさがり、600点。「海外旅行で買い物ができ、食べたいものをオーダーできる」レベルです。

   もちろん、これには言い訳があります。すべての駐在員が英米に駐在しているわけでもなく、メーカーなどでは中国などアジアの比率が高いこともあります。また、これは社内基準としてのものですから、実際に赴任する人はもうすこし英語力があるのが実際でしょう。

   しかし、それを差し引いた基準としても、かなり低いものが設定されているという印象です。

「実際はTOEICは満点でないと難しいです」

   お隣韓国の事情もお話しします。日本のメーカーがボロ負けしている相手が、サムスンやLGですから、彼らとの比較も意味があるでしょう。

   さて、かれらの英語の基準はいくつだと思いますか?

   700点?800点?・・・・

   いえ、彼らの基準は、最低で、900点です。

   しかも、これ、海外駐在の条件ではないのです。なんとこれ、新卒の門前払いの基準。900以上ないと、書類でNG食らうのです。

   実際に、以前サムスンで働いていた方にインタビューしたことがあります。

「韓国では、(サムスンやLGなどの)大企業に入ろうと思ったら、(門前払いの点数は900点ですが)、実際はTOEICは満点でないと難しいです」

と普通に言っていたので衝撃を受けたことがあります。

「たまにTOEICが930点くらいのひとがいますが、恥ずかしくてそれでは人に言えません。しかもTOEIC満点でも、会話が流暢でないひともいるので、企業は最近は必ず英語の面接をしたりしてテストします」

   正直この話をきいたときは、私もちょっと落ち込みました。

   さて、この記事は、韓国は凄い、日本がダメだ、ということを煽ることが目的ではありません。むしろ、この日本の現状は、若い人にとって大チャンスだということを言いたいのです。

   韓国ではすでにTOEIC満点でないと競争のスタートにすら立てないという状態です。それに比べて日本の企業で、TOEICが900もあったら、チャンスにあふれていると思いませんか?

「中学生も真っ青」状態から、7か月の留学で「駐在資格レベル突破」の例も

   日本の中高年社員は、なかば英語はあきらめている雰囲気もあります。いやいやです。ただ、若い人にとっては、この英語ギャップというのは、すごいチャンスだと思うのです。

   先日もセブの英語学校にいったとき、すごい事例を聞きました。歴代最高記録。

   渡辺成明さんという方で、入学時は、TOEIC250点という中学生も真っ青の英語力だったものが、7か月の留学をへて、TOEIC705点までアップしたというのです。

   にわかには信じられませんが、実際に卒業時の映像をみていると、流暢ではありませんが、たしかに喋れています。渡辺さんは、将来はアジアで働きたいとのことです。

   彼は20代で、転職活動中だそうですが、日本においては、多くの一流企業における駐在資格レベルを突破できているわけです。

   もちろん仕事のスキルは、英語力だけがすべてではないわけですが、この方のように7か月の努力で、ギャップが埋められるというのは、キャリア上の投資対効果(ROI)としてはとても良いのではないかと思います。

   渡辺さんのように英語力をつけた人は、わたしの勝手な想像ですが、現状について、にやにやしているかもしれません。

「日本人の大半が英語ができなくてよかった」

と。えっ?そんなこと考えていない?失礼しました……(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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