国税庁の2012年分「民間給与実態統計調査結果」によると、サラリーマンなど給与所得者のひとり当たりの平均給与は408万円で、前年比0.2%減となった。200万円以下と給与所得の低い割合は23.9%を占めた。
一方、1000万円超は172.3万人で、全体の3.8%。内訳は男性が157.6万人と女性を圧倒する。全体数はもともと多くはないが、5年前より50万人以上減っている。また2012年は、過去5年間で最も人数が少なかった。
年収1200万円で「減らせない」月20万円の外食
サラリーマンにとって、年収1000万円はひとつのステータスだ。余裕のある暮らしぶりを想像するが、「日経ビジネス」2013年7月1日号の特集によると、余裕どころか出費を抑える防衛策に走るケースが少なくない。
年収1200万円の48歳男性は、実父の老人ホーム費用や大学に通う2人の息子の仕送りと学費、「付き合いで減らせない」という月15~20万の外食費、家族の携帯電話代などに加えて光熱費、車のガソリン代と「あっという間に手取りは消える」という。
大学卒業予定の息子の就職先が見つからないといった要因も心配だ。ボーナスは夫婦の老後の貯蓄に回るため、自由になるカネは残らない。別の年収1000万円の男性の家庭は、子どもの教育費が増えたことで外食を控え、新聞購読を中止し、生命保険の解約まで至ったという。
ほかにも給料が高い分、税金などを多く取られている感があると嘆く男性や、マイカーを外車から国産車に買い替えたり、専業主婦だった妻がパートに出始めたといったエピソードも紹介された。
平均的な家庭からすれば、まだまだ羨望の対象だが、実際にその水準の人たちにとっては決して十分と思える額ではなくなっていると記事は結論付けている。
消費増税に加えて、2015年から所得税、相続税の最高税率が45%に引き上げられるのも、高額所得者を直撃する。住民税10%と合わせると最高55%の税率だ。
エイベックス・グループ・ホールディングス社長CEOの松浦勝人氏はフェイスブックで「この国はあえていうなら富裕層に良いことは何もない」「こんなことをしていたら富裕層はどんどん日本から離れていくだろう」と嘆いた。
伴侶に高収入を求める女性の「見栄と体面」
だが、実際に日本から離れられる人はわずかだ。サラリーマンなど大半は現状にがんじがらめで、海外移住どころではない。いまや年収1000万円層は、度重なる生活の切り詰めに追われる日々のようだ。
独身女性も、パートナーの年収が多ければ多いほどいいと考えているわけではない。「プレジデントオンライン」2013年9月27日によると、未婚女性が結婚相手に求める最低年収は「400万円~500万円未満」が34.8%と最多。「収入は問わない」を合わせると「500万円未満」が7割近くに達した、というのだ。
しかし「結婚難民」などの著書がある佐藤留美氏は、この結果から「昨今の独身女子は現実的」と結論づけるのは性急だという。女性には「自分のパートナーは、せめて『人並み』以上であってほしい」との本音がある、というのだ。
佐藤氏は取材経験から、「自分の周囲に高収入者および高収入者の伴侶が多い女性の場合、あるいは自分自身も高所得者の場合、自分の相手にも同じく高収入を求める傾向にあります」と説明する。例えば、航空会社の客室乗務員。
「彼女らの多くは、入社数年間は契約社員で年収300万円程度だったはずですが、自分の相手には年収1000万円以上の男性を求めています」
周りを見れば、同じ職場で働くパイロットや、顧客であるファーストクラスの乗客は高給取り。同僚がこうした男性と次々に結婚していけば「自分だって」と思うようになる、と指摘する。
とはいえ、いまどきの普通のOLの生活はそう裕福なものばかりではない。佐藤氏が引き合いに出すCAは例外的で、「見栄と体面」にこだわっても幸せになれないと気づいている女性も多いのではないだろうか。