最終面接に二日酔い!? 有名大の学生を採用すべきか

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   「若者の飲酒離れ」が指摘されて久しいが、それでも飲酒習慣のある学生は一定数いるだろう。受け入れる会社側にも、「お酒を飲める人が来るといいなあ」と思っている人がいるかもしれない。

   ある会社では、最終面接に二日酔いで来た有名大の学生を採用するかどうか、社内で意見が割れており、人事担当者が頭を悩ませている。

「サークルの飲み会を断りきれず」と謝罪したが

――中堅商社の人事です。現在、新卒者の採用活動が佳境に入っています。先日、某有名大学のAくんが応募してきました。当社には一流商社の落選組が来ることが多いので、「久しぶりの大物」「幹部候補」と社内では色めき立ちました。

   筆記試験、1次面接、2次試験と優秀な成績で最終面接までやってきました。しかし、最終面接時にどうもお酒の臭いがするのです。聞いてみると、

「すみません。昨日サークルの飲み会を断りきれず飲んでしまいました」

と、二日酔いであることを正直に認めたのです。面接は何とか終えたものの、役員間で意見が分かれています。

   管理部門の役員は「翌日が面接と分かっているのに、二日酔いとは何事か!?」「飲み会を断るとか、酒の勧めを断ることができないコミュニケーション能力に問題がある」として不採用を主張しています。

   一方、営業部門の役員は「二日酔いは犯罪じゃあるまいし、試験の出来と面接の結果で決めればいいんじゃないですか。なかなか来てもらえない大物なんだし」と擁護しています。

   バブル期入社の人事課長も「お酒ぐらいいんじゃないの? 自分たちだって飲むでしょ。僕の時なんか、飲み会の服装のまま面接に来ても内定出たよ(笑)」と言っていますが、本当にこのまま採用して大丈夫なのか不安です――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
学歴が「ハロー効果」になっていないか冷静になる

   今回の件で私がAさんについて感じたのは、自分が行きたいと思う会社の最終面接の前日に二日酔いになるまで深酒するかということです。最終面接に二日酔いで来るということは、御社は甘く見られていると思います。まだ学生だからといえ、このような姿勢の人を採用するのはやめた方が良いと思います。

   新卒採用はポテンシャル採用となるため、面接で注意して見るべき点は、自社のカラーに合いそうかどうかという点になります。学歴や試験はあくまで参考にしかならず、そこが良かったからといって気を取られてしまい、全てが良く見えるという評価の誤差が生じることがあります。これを「ハロー(後光)効果」といい、面接担当者はこの点には注意しなければなりません。Aさんの場合はいかがでしょうか。学歴に気を取られ、その後の面接で「〇大学だから優秀な学生に違いない」という色眼鏡で見ていなかったでしょうか。まずはこうした点を振り返って考えてみて下さい。

臨床心理士・尾崎健一の視点
「人物重視」なら素直な姿勢は評価できるのでは

   実際の仕事の能力は、やらせてみないと分からない部分も多く、採用面接とは「人物を見る機会」と捉える会社もあります。確かに面接前日の飲み過ぎは褒められた行動ではありませんし、意識すれば避けられたかもしれません。しかし本人は素直に認めて謝罪しています。反省し、正そうとする姿勢がある人は伸びしろがあります。そこにその人の人物像が垣間見えます。そういった性格が入社前に分かったことは、むしろ良かったといえるのではないでしょうか。

   まだ年齢も若いのですから、社会常識がなければ「会社で教育する」という姿勢で望むこともできます。現在は、家庭や学校できちんとマナーの教育をされていない学生が入社してきてしまう時代です。社会全体で教育するという考え方もあるでしょう。試用期間があるので雇用側のリスクも最小限にできます。アルコール依存症など何らかの病気があるようであれば、積極的に治療につないでいくプロセスが必要となります。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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