経営者のボヤキ「育児休業って、会社の負担が大きすぎない?」

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   育休、産休に対する当事者たちの考え方は、ときに真っ向から対立する。産休者は「出産を理由に自分のキャリアが断絶するのは納得できない」というし、会社は「働けないなら辞めて欲しい」と考える。

   しかし独身女性を安い給料で働かせて、妊娠したらお払い箱というのは、会社にとっていいとこ取り過ぎるのではないか。ある会社では、2人の女性社員が相次いで産休を取ることになったが、社長は企業の負担が重いと頭を抱えている。

ホンネは「一度辞めてくれればいいのに」

――メーカーの経営者です。このたび弊社の女性社員が、相次いで産休を取ることになりました。ただし2人とも事務職なので、派遣会社に頼むことで当面の仕事は乗り切ることができそうです。

   とはいえ、女性社員が妊娠、出産という自己都合で休むこと自体は、あまり歓迎していません。派遣の手配をする手間も掛かりますし、一時的にコストも増えます。引継ぎなどを考えれば、一時的な仕事の停滞も避けられないです。社員からも自分の仕事が増えることへの不満の声が聞かれます。

   こういう面倒を考えると、ホンネではいっそのこと一度辞めてくれればいいと思います。そうすれば新しい社員を雇用できるので、スムーズに引継ぎもできますし、復職時のバタバタもなくなります。

   もしまた働きたいのであれば、今回休む彼女たちなら何年か子育てに専念したうえで、その時点の事情によっては再雇用してもいいと思います。

   しかし、産休の申し出をされた社員に退職勧奨をすると法律に違反するので、それはできないということで、しぶしぶ産休を与えざるを得ませんでした。

   休んでいる間の給料は支払わずに済んでいますが、健康保険料や厚生年金保険料などは会社が負担していたのではなかったでしょうか。以前は「妊娠即退社」というのが暗黙の了解になっていたのですが、今後こういう事態が続くと若い女性の採用も考えものだなと思ってしまいます――

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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