「この会社マジぬるすぎ!」 ひとりブラック労働をやめない社員

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   働く人たちが自分の労働条件に敏感になることは、職場を健全化させるためによいことだ。しかし、ひたすら楽な仕事に流れれば、会社の業績が悪化して雇用が保たれなくなることもあるだろう。

   ある大手企業の支店では、中途入社した30歳男性が「余裕のある仕事ぶり」に反発し、モーレツな働き方で周囲のヒンシュクを買っているという。しかし会社としては、頑張りが結果につながることも期待しており、その狭間で頭を悩ませている。

同僚たちは「ワークライフバランスを欠いた働き方じゃ持たない」

――大手メーカーの支店で総務を担当しています。弊社ではコンプライアンスを重視し、残業時間を1分単位で集計しています。ところが最近入社してきた中途入社のAさんが、集計用のシステムを適当に操作して時間外労働をつけずに仕事をしています。

   Aさんは30歳で中堅メーカーからこの春転職してきたのですが、営業部に配属されて数日経ったころから会社の不満を公言するようになりました。

「いやあ、やっぱ大手はぬるい。マジぬるすぎる! 大した仕事もしてないくせに、偉そうにふんぞり返ってさ。こんなことだから会社が傾くんだよなあ。下請けとか非正規とかを安く使ってるんだから、ノウノウと残業代なんか貰ってられませんよ!」

と聞こえよがしに言っています。仕事ぶりはモーレツで、朝は始業前から夜も遅くまで精力的に仕事をしています。

   過去の営業企画書をあさっては、自分なりにアレンジして客先に提案を積極的にかけており、その甲斐あってか彼の担当顧客からは、問い合わせや引き合いが増えているそうです。上司は「あいつ、いきなり営業トップ取るかもな」とつぶやいていました。

   しかし同僚たちは冷ややかで、「あれじゃ“ひとりブラック労働”だよ」「ワークライフバランスを欠いた働き方じゃ持たないよね」などと陰口を言っています。それはAさんの耳にも入っているようですが、

「大して働きもしないくせに、給料が少ないだの結婚できないだの、情けない話だわ。早く帰って家で何してるの? どうせ大したこともしてないくせに」

と聞く耳を持ちません。周囲との調和はともかく、労働時間の管理はちゃんとしてもらわないと本社から叱られてしまいます。しかし仕事を制限すると、支店の売上を抑えてしまうことにもなるし…。どうすればよいのでしょうか――

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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