割と人事の間では有名な話なのだが、
「日本企業では、普通に面接をやったら女性の方が優秀なので、調整して女性の評価を下げている」
という話をTwitterでしたら、かなり反響があって驚いた。評価自体を調整するか、最初に女性枠を作っているかの違いはあるが、これは大手ならどこでもやっている話だ。
「そんなの信じられない!」という人もいるだろうが、大手の総合職採用における女性の割合はたった7.4%に過ぎない(厚生労働省、04年。従業員数5000人以上の企業)。人事部の“調整”の結果である。
日本型雇用の下で負うハンデは大きい
なぜ優秀な女性を素直に採用しないかというと、日本企業の人事制度が終身雇用・年功序列ベースだからだ。
この制度は長期間勤続することを前提としているので、途中で(出産や育児にともなう休職で)勤続年数に穴が開く可能性の高い女性を採用するのは、いろいろと不都合があるためだ(子育ては女性のみの役割ではないという議論もわかるが、ここでは省く)。
たとえば「課長職への登用は、勤続15年以上で年齢40歳以下が対象」という内規がある企業の場合。30代で2年間休職した女性の場合、事実上、課長以上への昇格はきわめて困難となる。幹部候補になりづらい人材の配属には、事業部側も難色を示すから、人事も採用しづらい。
さらに言うなら、年功序列賃金というのは、40歳くらいまでは安い賃金でこき使って、それ以降にある程度の賃金にして帳尻を合わせる仕組みだ。割安でこき使えるはずの時期に“休職”されかねない人材は、それだけで企業からすると割高と見えてしまうのだ。
要するに、現状の日本型雇用ルールのもとでは、女性は非常なハンデを背負わされているということだ。だから、面接という超短期の評価では男子に勝っても、超長期雇用を前提とした内定は勝ちとれないのだ。
グローバルにならなければならないのは企業の方だ
対策は実にシンプルで、勤続年数をベースとした人事制度から、現時点での役割に応じた処遇を提供する人事制度に切り替えればいい。これなら、途中で休職することを気にすることなく、企業は採用面接で優秀だと判断した人材を自由に採用することができる。休職後の復職のハードルも下がるだろう。
ちなみに、国内であっても、終身雇用を意識していない外資系企業や新興企業は女性の採用に積極的だ。
筆者のお付き合いのあるIT系企業の社長は「うちはサイバーエージェントとは違う!」と言いつつ、新卒採用のほとんどを女性で固めている。大手が男子を率先して採用する結果、新興企業から見れば、相対的に女性が優秀に見えるからだ。
同じことは、外資系企業においても言える。「日本企業で採用されなかった女性がわが社の日本支社を受けにくるが、なぜあんな優秀な人材が採用されないのか」という質問を、筆者自身しばしばされる。
近年、日本の産業人から「学生はもっとグローバルになれ」とか「国は早く移民を受け入れろ」といった意見を耳にすることが多い。だが、まず最低限の世界標準を満たすべきなのは日本企業自身だというのが、かねてからの筆者の持論だ。(城繁幸)