労働環境がキツすぎて、早く辞めないと身体がもたない。でも、自分から辞めると言い出したら「自己都合」になるので、失業保険の受給に時間がかかってしまう。つなぎで使える蓄えもないし、どうしたらいいのか…。
そんな悩みを持つ社員が、どこからか「抜け道」を探してきたらしい。ある会社では、20代後半の社員が「自分が退職せざるを得ないのは会社のせい」なので、「会社都合」で辞めさせてほしいと要求してきたという。
「辞めるのは会社のせい。フツーに働きたいんだ!」
――広告代理店の人事です。営業部長から「部下がワケの分からないことを言っている」と連絡がありました。28歳の営業マンA君が、会社を辞めたいというのです。
辞めること自体は仕方がないのですが、A君の主張は「会社都合で辞めたい」というもの。そうしないと、退職した翌月から失業手当がもらえないと言うのです。
しかし会社は、A君に会社を辞めるよう勧めたことはないし、そうすべき事情もありません。営業部長が「どう考えても自己都合だろ」というと、こう反論したそうです。
「ここ半年くらい、月50時間以上の残業が、ずーっと続いてるんですよ。こんなに長時間まともに働いてたら、誰だって身体を壊しますって。私はフツーに働きたいんです。ここにいられないのは、長時間労働を強要する会社のせいなんですよ!」
何となく分かるような、屁理屈のような気もしますが、「直近3か月で45時間を超える残業が続いていることは証拠に残している」「ハローワークに問い合わせたら大丈夫と言われた」とまで抗弁します。
退職後もトラブルが続くのは厄介なので、多少の便宜を図ってもいいと思います。ただ、辞めるのは明らかにA君の都合ですし、理不尽に屈すれば、つけこまれて別のクレームが来るような気がします。
A君の離職票の離職理由には「労働者の個人的な事情(一身上の都合)」にチェックして突き返そうと思いますが、何かリスクはあるものでしょうか――