いよいよ2012年7月1日から、楽天で「完全英語公用語化」が始まる。グループ会社7000人には、社内のどの場面でも英語によるコミュニケーションが義務づけられる。業務に関する会話は、日本人同士であっても英語で行わなければならない。毎週火曜日に開かれる「朝会」では、2000人の社員を前に三木谷社長が英語で話し始めた。
「英語ができない人」は、さぞかし肩身の狭い思いをしているだろうと思いきや、嵐の前の静けさだろうか、意外にも「優遇」されているようだ。足りない英語のスキルをあげるため、仕事そっちのけで勉強時間を確保してもらっているという。
なぜか英語ができる人に仕事のしわよせ「不公平!」
10年5月の方針発表から2年あまり。会社が求める水準は、一般社員はTOEICで600点、係長クラスは650点、部長クラスは750点だ。600点といえば、海外旅行で買い物や食事がオーダーできるレベルで、英検2級程度とされる。必ずしも難しいとはいえないが、仕事で必要のない人にとっては無意味と感じられるだろう。
ただ、「完全英語公用語化」は会社の決定事項。三木谷社長も「社員みんなでやるからこそ意味がある」と言っている。最低水準をクリアできていない部下がいれば、上司だって気が気ではない。「君の管理能力が足りないから」なんて思われたら、自分の地位まで危うくなってしまう。
中には、部下に対して「君は仕事より英語を優先しろ」と指示するマネジャーもいる。部署内の「集中的に英語学習をすべき人」をマークし、午前または午後のみ出社として、空いた時間で社内の英会話教室に出席させたり、自宅学習をさせたりするのだという。
そのとばっちりを受けるのは、英語スキルが水準を超えている社員たちだ。英語ができない社員が処理できない仕事は、そういう人たちに回ってくる。
水準を超えている人にも、さらなるスキルアップが求められている。しかし、増加する業務量のために平日の夜は勉強できず、レッスンには土日を使わざるをえない。ある「英語ができる社員」は、こうぼやいている。
「基準点を満たしているのに、英語ができない人の仕事まで引き受けさせられているのは理解できない。これで彼らと同じ給料なんだから、不公平ですよ!」