いまだに20年債、30年債で資金を借りている公営企業が少なくないのは、前回指摘した通りだ。その資金は、約1800の自治体が共同出資した「地方公共団体金融機構」が、地方自治体を通じて公営企業に貸し付けたかたちになっている。
機構では、金利変動リスクに備えて約3兆円の「準備金」を用意している。しかし公営企業が超長期借り入れを繰り上げ返済し、短期に借り替えてしまうことができれば、この準備金を「埋蔵金」として緊急で必要な事業に使えるようになるのではないだろうか。
超長期で貸し付けるから「準備金」が必要になる
金融機関の仕事には「お金集め」と「金貸し」というふたつの仕事がある。今すぐに使うあてのない人からお金を集めて、今すぐに必要とする人に貸すのである。
機構の開示資料をみると、お金集めは主に10年以内に返済する約束で投資家から集めている。この投資家は個人ではないが、平たく言えば満期が10年以内の定期預金で、銀行がお金を集めているのと同じである。
一方、金貸し、つまり機構が地方自治体にお金を貸す条件は、20年もの、30年ものが少なくない。基本的に固定金利で、短期よりも高い金利で貸すので、貸し手の財務には一見都合がよいように見える。
ただし、お金集めと金貸しの満期の期間がずれているので、金利が変動したときのリスクが生まれる。たとえば、公営企業に貸す20年ものの金利は、期初の市場金利と連動して決まる。期中の20年間は変わらない。
ところが、機構はたとえ20年間の期間で公営企業にお金を貸すにしても、そのお金の元は、10年以下の満期で集めたお金である。だから機構が20年間お金を貸す約束をすると、お金集めは期初と期中の少なくとも2回は行わないといけない。
期中にお金を集めるときに、期初よりも金利が上がったとしたら、後半の10年の貸付金利と資金調達金利の差は狭まる。これによって予定された利益が減ってしまったり、ときには損失が生じたりすることもある。
こうしたリスクに対処するため「金利変動準備金」が用意されている。その額は約3兆円にものぼっている。もし、公営企業が超長期でお金を借りるのをやめて、お金集めと金貸しの期間が一致するようにすれば、金利変動準備金は不要になる。