日本人が「そんなに儲かってないのに、なぜか有休も取れず長時間労働」のワケ

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   今年のゴールデンウィークも、行楽地は大いに賑わい、高速道路は長蛇の渋滞を見せた。有給休暇をあまりとらない日本人にとって、お上が定めた連休はとても貴重なものなのだ。というわけで、今回は日本人と有給休暇について考えてみたい。

   様々な指標が凋落傾向にある日本国であるが、相変わらず有給休暇取得率の低さでは他の追随を許さない。年間総実労働時間もヨーロッパの平均的な国々より年間300時間くらいは多いから、低成長とはいえワーカホリックぶりは健在のようだ(総務省・労働力調査)。

   中にはそれをもって「労働市場改革なんて大それたことはやらなくても、国がまずサービス残業をきっちり取り締まり、有給休暇もヨーロッパ並みに消化させれば、失業問題はすべて解決する」なんてことを真顔で言う人もいる。

   本当に、国がきっちり労働基準法を企業に遵守させるだけで、日本はヨーロッパ並みにワークライフバランスの取れる国になるのだろうか。

会社がすべて管理するから「もっと働け」になる

   日本と諸外国の働き方の違いを簡単に説明すると、会社が責任を持ってきっちり管理するのが日本、個人がある程度の裁量を持って自己管理するのが他国、というくくりになる。

   日本の場合は、労働者は裁量を放棄する代わりに、企業が(終身雇用も含めて)きっちり労務管理をするというのが建前となっている。でも、現実にはそれはとても難しい。

   たとえば、釣りをしているA氏がいたとする。彼の成果は釣った魚の数で決まる。何時間座っていようが釣れなければ成果はゼロだし、工夫してたくさん釣れれば午前中で家に帰ることも可能だ。

   彼には残業という概念はないし、疲れたら休むので過労死とも無縁である(あったとしてもそれは自己責任だ)。休暇も、自分で調整して取得することが可能だ。そう、これが裁量というものだ。

   一方、労基法に基づいて、時間管理で釣りをしている人がいるとする。彼は釣れようが釣れまいが、座っていさえすれば報酬がもらえる。だから、たくさん釣るための工夫もしなくていい。それをするのは、彼の管理をしている会社だ。

   結果として、彼の裁量は極めて限定的である。どうやってたくさん釣るかを考える仕事はもちろん、出勤退勤の時間、休暇のスケジュール、勤務地にいたるまで、ほぼ会社が管理する。

   小さな会社ならできるかもしれない。でも、ある程度以上の組織なら、上の人間はきっと現場のことまで頭が回らないだろう。結局、A氏ほどには釣れないはずだ。でも時給を払っている以上、何とかしなくてはならない。そこで、会社は「もっと長時間釣れ」というだろう。あるいは時間外手当に上限をつけるかもしれない。

   こうしてB氏は「大漁とは無縁だけど、やたら長時間労働で休暇も全然取れない」という状況が慢性化するはずだ。今の職場で思い当たる節があるという人は多いのではないか。

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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