「またおじさんから、合コンのセッティング頼まれちゃった…」
イラストレーターのB子(26歳)が、ユウウツそうにつぶやいた。ある中堅出版社の仕事をきっかけに、編集部長のDさんから飲みに誘われることが増えたらしい。そのうち要求はエスカレートし、「合コンしたいね。友だち呼んでよ」とたびたび頼まれるようになった。
結婚のチャンスはあった? 夢を叶えた人生
Dさんは50歳目前の40代男性。これまで「仕事に命を捧げてきた」アラウンド・フィフティだ。昔は作家先生と飲みに行き、深夜に会社へ戻って朝7時の入稿に間に合わせたものだ、と懐かしそうに語っていたという。
土日の出張も多く、今でも全国各地を移動することもあるが、小さいころから出版業界に憧れていたDさんにしてみれば、そんな暮らしもまったく苦痛ではなかった。仕事面にフォーカスすれば「夢を叶えたオトコ」と言えるだろう。
落ち着いた見た目のため既婚者に見えたが、「実はずっと独身」と聞いてB子は驚いた。その様子を見て、Dさんは慌てたように言い訳をし始めたという。
「いや、僕にだってね、結婚のチャンスは何回かあったんだよ。結婚しようかなと思った人もいたしね。でも、20代のころは仕事を覚えたくて、とにかくガムシャラにやるじゃない? 30代になるとできる仕事が増えて楽しくなったし、40近くなるとそれなりの役職がついて部下も抱えてやることが増えて…。そんな感じで婚期を逃しちゃったのかもしれないねえ」
人生のターニングポイントで、結婚より仕事を選んだDさん。B子は「結婚したって仕事をバリバリしてる人、たくさんいるじゃないですか! 結婚しなかったんじゃなくて、できなかっただけじゃ?」とツッコミたくなったが、そこは黙っていた。少なくとも、Dさんが仕事を愛してやまないのは事実だからだ。