可愛いコばっかりひいきするのは、パワハラじゃないの?

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   「何が職場のハラスメントに当たるのか」という議論が進んでいる。新たな定義も生まれているが、すべてをカバーできる例示は難しいだろう。そもそも部下や同僚の「人としての尊厳」を守る精神がなければ、予防などできない。

   ある会社では、上司が特定の女性社員ばかり甘やかして可愛がるのは不快だと、部下が人事部にクレームを入れてきたという。

「あの子はすぐ寿退社しちゃうから、覚えなくていい」

――製造業の人事です。入社2年目の営業アシスタントA子さんが相談にやってきました。上司の営業部長が職場でハラスメントをしているというのです。

   どんな嫌がらせをしたのかと聴いてみると、A子さんは「可愛いコばっかりひいきするのは、おかしすぎます」と涙目で訴えてきました。

   A子さんによると、同じアシスタントで同期入社のB子さんが先日、見積書の金額を間違えてトラブルになりました。お客さまに謝罪に行くなど大騒ぎになったのですが、部長は、

「間違えたって、しょうがないよね~。B子ちゃん、分かんなかったんだからさ」

と慰めていたそうです。また、B子さんが担当した顧客で製品トラブルが起き、品質管理部門とのやりとりに苦労しているときも、

「オレから品管の部長に言っておくから、B子ちゃんは次の仕事をやっておいてね」

と優しく言っていました。前任の上司に仕事を厳しく仕込まれたA子さんは、こんな甘いやり方ではB子さんのためにならないと思い、「自分でやらせないと仕事を覚えませんよ」と忠告すると、部長は、

「彼女はそんなの覚えなくていいんだよ。あの子はカワイイからね~。すぐ寿退社しちゃうだろうしさ~」

と笑っていたそうです。

   A子さんは「私の前で『あの子はカワイイ』とか当てつけですか? B子は部長の好みなんだろうけど、これで仕事の評価が私と同じなんて不公平です!」と怒っています。本当に何かのハラスメントになるんでしょうか――

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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