スマホのアプリで「2ちゃんねる」にハマってしまった

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   正月にスマートフォンを買った40代の男性会社員Aさん。さっそくいろいろなアプリを試しています。

「いまのところ、一番気に入っているのは『泣ける話 にちゃんねる』と『笑える話 2ちゃんねる』ですかね」

   実はAさんは、これまで電子掲示板の2ちゃんねるを見たことがありませんでした。叩かれて怖いとか、使ってる用語がわからないとかではなくて、「自分の人生に必要ないもの」だと思っていたからです。

   それがいまさら、なぜハマってしまったのでしょう。

ケータイ小説に似た面白さ、暇つぶしに最適

「このアプリには、100~200ぐらいの話が入っているんです。文字数を数えたことはないんですけど、だいたい10分、15分ぐらいでサッと読める。移動や休憩など、ちょっとした時の暇つぶしにいいんですよね。ショートノベルを読んでいる感覚っていいますか」

   2ちゃんねるには、わざとそれらしいことを書いて読む人を引っかける「釣り」やまったくのウソも含めて、さまざまな創作や実話が書き込まれています。

   実況中継を装って、実のところ、すでに書き上げてあった創作を書き込む『電車男』エピゴーネン(真似)なども、一時はあちこちで流行ったりしました。

   『電車男』のように人気があったり、出来のよいものは、書籍にまとめられたりドラマになったりしましたが、巨大な2ちゃんねるの中を探って、全部を見つけて読み通すのは無理があります。

   しかし、出来のよいものは、暇つぶしに読むものとしてはちょうどいい。なんだか、一昔前に流行した「ケータイ小説」に似ています。

「ところで、ああいった話は、全部本当のことなんですかね?」

とAさん。聞けば、話のカテゴリーのなかに「父母の泣ける話」や「兄弟の泣ける話」などにまじって、「実話の泣ける話」というものがあるのだとか。

ネットで腕を磨いた人がプロになる日も近い?

   そもそもが匿名の投稿ですから、私が書きました、と本人が名乗り出てこないと検証のしようもありません。実話をそのまま書いたものもあれば、事実を膨らませて書いたものも、まったくの創作もあるのではないですか、そう答えておきました。

「うーん、なかには、元ネタはアレかな、と思うものもあるんですが、創作だとしたら相当うまいなと感じるものも多いんです。そういうのって、プロが書いてるんでしょうかね?」

   それも、外部からは伺い知れません。プロの手慰みもあるかもしれませんし、プロを目指している人が書いている、なかにはまったく普通の人が趣味的に書いている場合もあるでしょう。

「そうですか。だとすれば、本離れとか読書をしなくなったとか言われてますけど、日本の未来も捨てたものじゃないなって思いますよ。本当によく書けてるものがあるんですから」

   筆者にとっては、『電車男』が話題になった頃のデジャビュを見る思いです。

   先日、芥川賞と直木賞の受賞式の実況中継をニコニコ生放送でやらせてもらいましたが、ブログや掲示板などネットで腕を磨いた人がプロになって大きな賞を取ることも、そんなに遠いことではないかもしれません。

井上トシユキ

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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