厚生労働省は、平成22年度に「賃金不払残業(サービス残業)」を是正指導した結果を公表した。是正企業数は1386社、是正指導によって支払われた割増賃金は合計で123億2358万円となった。
企業数、支払総額が3年ぶりに前年比で増加したことについて、厚生労働省は大手紙に対し、「(震災前の時点で)景気が持ち直し、残業自体が増えていた影響ではないか」とコメントしている。
厚労省「黙って引き下がるわけにはいかない」
このコメントは、「景気が良かったからタダ働きも増えちゃったんじゃないの?」という意味にも受け取られかねず、働く側からすれば「責任官庁なのに他人事すぎる」と感じさせる。ネット上にも、
「厚労省の発表はむなしい。ほとんどのサビ残は発覚してないのに」
「国は(問題の存在を)知っているのに黙認しているところがムカツク」
「(労働基準)監督署は何をやっているのか」
といった批判の声も上がっている。しかし、厚労省の資料「賃金不払残業の是正事例」を見ると、頑張っている監督署もあるのではと思わせる記述がある。
関東にある従業員200人のメーカー。ある監督署の職員は、工場の生産状況から見て、日々の時間外労働があまりにも少なすぎると感じた。会社は、「始業・終業時刻をタイムカードで管理するとともに、時間外労働の時間数は『自己申告』により確認している」と説明するが、どうも怪しい。
そこでこの監督署では、夜間の張り込みを行い、時間外労働を行っている労働者がいることを確認。調査結果を示したところ、会社はサービス残業の存在を認め、不払いになっている割増賃金を支払った。
厚労省監督課の担当官によると、事案の重大性、悪質性などを勘案し、監督署の判断でこのような積極的な調査を行うことがあるという。
「臨検(会社への立ち入り検査)の際に、書類や経営者の説明の中に矛盾があり、ウソをついていることが分かる場合があります。企業が騙そうとしているのに、監督官が黙って引き下がるわけにはいきません」
11月1日から「メール告発」を受け付ける
厚労省では、11月1日より1か月間「労働時間適正化キャンペーン」を実施し、監督署による重点監督を実施する予定だ。1日には、新たに「労働基準関係情報メール窓口」を開設し、職場からのメールによる告発を受け付けるという(アドレスは1日に公開)。
平成22年度におけるサービス残業の一社あたり最高支払額は、某旅館業の3億9409万円がトップ。次いで、某卸売業の3億8546万円、某電子通信工事業の3億5700万円が続く。
従業員が違法状態を受け入れていると勘違いしていると、ある日とつぜん内部告発されて、多額の支払いが必要になるかもしれない。ネット上には、働く人の立場から、
「残業代はきっちり払って、有休も病欠とは別でしっかり取らせれば、愛社心が必ずわく。日本なんて労働環境が腐ってるとこばっかなんだから、その中で頭一つ抜けてしっかりすれば、全国のエリートたちがここぞとばかりに入社試験に集まってくるぞ」
と、サービス残業を放置する経営者をたしなめる書き込みが見られる。