中日ドラゴンズに見る「ムラ社会の掟」

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   落合博満・中日ドラゴンズ監督の今期限りでの更迭が話題となったが、その中日が昨日、見事リーグ優勝を勝ち取った。これまで過去3回のリーグ優勝とクライマックスシリーズからの日本一を経験し、すべての年度でAクラスを達成した指揮官は、最後の花道まで自分でおぜん立てしたわけだ。

   ところで、実績からすれば文句なしの彼を、球団はなぜ更迭したのだろうか。観客動員数の低下が挙げられることが多いが、それは野球全般的な問題であり、後付けの理由だろう(そもそもそれは背広組の責任だ)。本当の理由は、中日球団がムラ社会であり、そのルールを彼が最後まで受け入れなかったためだ。

年功を否定し能力にこだわった落合監督

   ムラ社会というのは、閉鎖的で外部との交流を前提としない組織のことで、昔の農村が典型例だ。

   どんな組織でも、秩序を維持するために貢献度に応じた利益を分配する必要があるが、長期の関係維持を前提とするムラ社会の場合、それは「ポスト」という形を取ることが一般的である。キャッシュなら大金貰って、はいサヨナラというケースもあるが、ポストなら将来回ってくるまで、少なくとも一定の関係は維持し続けないといけない。

   往年の名選手ではあっても、落合は生え抜きではなかった。そして、出自にこだわらず、外部から自分の価値観に沿った人材をコーチとして招へいし続けた。

   リーグ優勝したチームの監督以下、コーチ陣も含めてすべて入れ替えられるという異常な人事は、中日球団内部が本質的にムラ社会であり、ムラの秩序維持のためにポスト防衛に走ったという構図が深層にある。

   そういう意味では、生え抜き人事にこだわった球団側は日本型雇用的であり、年功ではなくリアルタイム能力にこだわった落合は職務給的と言えるかもしれない。

身売りした横浜の「しがらみゼロ」旋風に期待

   もっとも、5年前に縁もゆかりもない星野仙一を監督に招こうとした巨人も、やはりOB会の反対で流れているから、特に中日だけが古いというわけでもないらしい。

   現役時代は完全実力制度ではあるが、ポストについては純日本的というハイブリッド型組織というのが、プロ野球の特徴と言えるだろう。

   ちなみに、氏の後任には往年の大ベテラン、高木守道氏(70歳)の起用が決まっている。球団側の言うような「新しい風」は望むべくもないが、コーチも恐らく生え抜きで固められ、ドラゴンズ村はめでたく昔の結束を取り戻すことだろう。

   ただ、それでチームが強くなるかどうかは別の話。個人的には、身売りで心機一転した横浜が、落合以下、旧中日コーチ陣を招へいして、しがらみゼロの職務給チームとして旋風を巻き起こすことを期待している。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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