鉢呂先生が3年どころか9日で大臣を辞任なされた。あの松本復興相と並ぶ歴代4位のスピードだそうである。辞める必要があったのかどうかは、各人の感じ方なのでここでは触れない(個人的には、それは選挙で判断されるべきだとは思うが)。
ただ個人的に感じたのは、インタビューに答えることがすごくリスクのある時代になったな、ということだ。
送り迎えの世間話が危ない
僕自身、各種メディアから仕事で100回以上インタビューを受けてきたが、基本的にインタビュワーというのは、記者であれ編集者であれディレクターであれ、事前に大まかなシナリオを頭の中に描いた上でインタビューをするものだ。
その中でも腕の良いインタビュワーになると、全体の構成まできっちり組んだ上で、こちらの発言をどういう風にちりばめるかまで想定しつつ、誘導的な質問をジャブのように繰り出してくる。
と書くと「メディアのやらせか!?」と脊髄反射する人もいそうだが、これはメディアの作り手ならみんなやっていることだし、むしろ受ける側としてはスムーズに話が弾んで助かる(逆に、ホントに何も考えてない奴が来ると、ぐだぐだになって始末に負えない)。
ただ、僕みたいな無役無色の人間でさえ、やはりスタンス的に合わないメディアの人間はいるもので、そういう立場の人から、明らかに悪意を持った誘導をされた経験は何度もある。
たとえば、僕に「政治家やNPOに行く人間が増えているのは、若者の現実逃避」とか、「いまだに非正規雇用をやってる団塊ジュニアにも悪い面はある」と言わせたいと思っている人というのは、実は結構いたりする。
こっちもそういう意図が分かるから踏み込まないけれども、それでも取材を終えて、送り迎えの世間話の間は、やはりガードが下がってしまう。そして、そういう言葉をとらえて記事を書かれたらと思うと、正直、今回の鉢呂さんのオフレコ発言ピックアップは他人事とは思えない。
その「失言」、選挙まで覚えていられるか
まあ、その程度でどうなるもんではないだろうけれども、立場のある偉い人の場合はネットに即時に転載され、またたく間に拡散されるに違いない。
フォローしておくと、メディア自身のスタンスが変わったわけではない。変わったのは、発言のインパクトの振れ具合だろう。
というわけで、個人的には、失言で偉い人をどうこうは言わないことにしている次第だ。事実について報じるのは構わないけれども、それを判断するのは有権者に任せておけばいい。
「いちいち問題発言を選挙まで覚えていられないじゃないか!」
と危惧する人もいるだろうが、選挙までに忘れているようなら、その程度の話ということだ。
城 繁幸