ミッションは「生き残れ!そして脱出しろ!」――。パチンコ大手のマルハンが企画したインターンシップに、約1700人もの応募が殺到しているという。大学生や専門学校生などを対象に、日本海の無人島で3泊4日サバイバル体験をしてもらう。学年は不問だ。
「ディスカバー」と名づけられた体験企画のコンセプトは、「ひと皮むける(限界突破)」。不合理なこともある社会の中で、学歴も大学名も関係ない実力主義の世界を体験し、生きることや働くことの原点を体感してもらうという。
持ち物は着替えと日焼け止めだけ
最大75人の受け入れを予定。応募者多数のため、説明会の受付はいったん締め切った。福岡の説明会では、8割が女性の希望者だった。島に持っていけるのは、着替えと日焼け止めのみ。食料や携帯電話はNGだ。
現地では、社員1人と学生5人程度のチームで行動し、道具などを取り合う「リアルトレーディング」や、自分という存在を確かめる「キャリアビジョン」を行うというが、細かな内容は明かされていない。
マルハンの人材開発担当者は、「野望(ゆめ)を応援する企業として、若者たちに学びの場を提供するとともに、会社の志を知ってもらう場にしたい」と語る。
前時代的な「地獄の特訓」を思い起こさせる内容だが、ネット上には「女子大生とサバゲー!」「結構面白そうじゃね?」「就活とかじゃなく遊びでなら楽しそう」など、好意的な意見もある。その一方で、
「これって日本人の若者をいじめて楽しんでるんですか?」
「そんな奴隷になって、金だけ稼いで生きてると呼べるのか?」
「こんなレベルで世界で勝てるわけねえじゃん。日本のブランド力が落ちるのは当然」
などと批判する書き込みも見られる。
学生のねらいは「年収1200万円」?
担当者に「サバイバルで生き残ったら採用なのか」と尋ねたところ、
「インターンシップの参加者の中から、弊社に応募してくれる人が現れればありがたいが、あくまで人材開発の一環であり採用活動とは直接関係していない」
ということだった。日本経団連の「採用選考に関する企業の倫理憲章」でも、青田刈りにつながらないよう、インターンシップと採用選考を切り離すよう呼びかけている。
とはいえ、優秀な人材の確保に各社は躍起になっており、意欲や能力の高い人材を集める広報活動として、目立つ形でのインターンシップは一定の効果をあげそうだ。
しかし「サバイバル研修」というだけで、1700人もの学生を集められるのだろうか。マルハンの採用サイトによると、役職者の年収モデルは、大卒27歳の店長で年収約790万円。大卒33歳のエリア長では、年収は約1200万円にもなる。
学生側も、そんな厚遇を得られる可能性のある企業に、自分を売り込める貴重な機会になると、密かな野望を抱いているのかもしれない。