先日、厚生労働省の「労働経済白書」が発表されたが、あまりのレベルの低さに驚いた。
一応、若年層の非正規雇用の増加と、いったん非正規雇用になった人間が固定化される傾向にある点は認めつつも、その原因を、(1)バブル崩壊後の不況で企業が正規雇用を絞り込んだため、(2)大卒者が増えすぎたため、の2点であるとする。
問題の責任はすべて厚労省にあるはずだが
まず、不況時に雇用調整するのは企業にとって当然のアクションで、お上にとやかく言われる筋合いはない。
問題は、終身雇用コストが異常に高すぎるために、企業が国内で雇用を増やしたがらない点と、雇用調整がその時に卒業する世代に集中し、そこでコケると厚労省自身も認めるようにリカバリーが効きにくいという点にある。
(2)については、論評するにも値しない。仮に高卒者の就職が行け行けドンドンの売り手市場であれば、そういうロジックが成り立つ余地もあるだろう。だが現実には、大卒以上に悲惨な状況である。大学数を絞ったところで、10代の雇用がもっと悲惨になっていただけの話だ。
さらに言えば、「椅子に空きがある分だけ、若者に高等教育の機会を与える」という思想自体が根本的に間違っている。「弁護士の仕事が減るから、司法試験の合格者数を減らせ」という宇都宮・日弁連会長と同じで、50年遅れの社会主義者の発想だ。
本来、大学を作ること自体は誤りでも何でもなく、増えた大卒資格者の間で競争が起こり、生産性が向上するはずだった。その競争が起こらないまま、新規参入者が入り口で滞留し、社会全体の生産性が停滞しただけの話だ。
つまり、必要なのは、正社員を競争に巻き込むための規制緩和であり、問題の責任はすべて厚労省にある。にもかかわらず、一応は大学出ているはずの厚労省のお役人たちが、こんな小学生レベルの“白書”を作文してしまう理由とは何だろうか。
「責任転嫁」白書に才能を浪費するな
理由は簡単。「企業が採用絞ったから」「大学増やしすぎたから」というロジックを使うと、あら不思議、責任のすべては企業と文部科学省にとんでいってしまうから。
要するに、この白書の本質は、お役所の適任転嫁なのだ。目的が責任転嫁である以上、そこになんらの解決策も示されていないのも当然かもしれない。
というか、厚労省内部でこういう資料を作らされている若手官僚は、こんなダメ省庁からは早めに退職した方がいい。
君たちの有能な才能、高いモチベーションは国家の適切な発展のために使われるべきであり、脳無し中高年官僚の天下り先確保のために浪費するなんて、悲劇でしかない。
3年で辞めるか辞めないかの判断基準は、職場をざっと見渡して、そこになりたい人がいるかどうかが、一番大きな要素だ。
責任転嫁ばかりでカウンタープランすら含まれていないアウトプットを見る限り、なりたい大人が厚労省にいるとは、ちょっと思えない。
城 繁幸