ビジネスパーソンが「震災自粛中」に考えておくべきこと

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   「3.11」から、1か月半あまり。東日本大震災は原発の二次災害まで誘発し、リーマンショックによる不況から「あと1歩」で脱却できる状況を、ふりだしに戻すどころかマイナスにまで落としてしまいそうです。

   読者の中にも、仕事に大きな影響を受けた人もいるでしょう。震源地から遠く離れた東京にも「自粛」の大きな波が押し寄せて、経済活動に急ブレーキをかけています。復興を考えれば、いつも以上にカネを回さなければならないはずですが、いまも逆の動きが続いています。

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優しさと臆病さが「横並び」を生んだ

   これには、日本人の「優しさ」と「臆病な横並び意識」が並存しているように思えてなりません。

   被災地の人たちが気の毒、という感情が、いつのまにか形を変えて、消費を過剰に手控えたり、広告を出す企業にクレームを入れたりするなど、いささか過剰反応とは言えないでしょうか。

   各社でも、KY(空気が読めない)とバッシングされることを恐れて、「他の会社はどうしているのか」と情報収集に余念がありません。

   節電の呼びかけに対し、エレベーターを運休させたり、トイレの保温便座を止めたりする様子は、米ニューヨークタイムズでも驚きをもって捉えられていました。

「花見をして楽しむなど、被災者の人たちに申し訳が立たない」

という流れができると、歓送迎会が一斉に中止となりました。飲食店では予約の直前キャンセルが相次ぎ、損害を被った人も多くいたはずです。

   一方、被災地の日本酒「南部美人」の蔵元から、

「酒を飲んで騒ぐことも復興支援になる」

とメッセージが出たとたん、「酒を飲むべき」という動きが広がり、ユーチューブの動画が50万回以上も再生されました。中には復興の名の下に、毎日飲み歩く極端な人も。

   このような状況の中、私たちビジネスパーソンは、どのような心構えで事に当たればよいのでしょうか。ひとつは「横並びの自粛」が収まり、来るべき復興が始まるときに向けた備えを進めておくこと。もうひとつは、語弊がありますが「横並び」を逆手に取ることです。

新しい需要が生まれる可能性もある

   復興が始まったとき、ビジネスをその波に乗せるためには、「自粛」後の状態を予測しておくことが必要です。これまで当たり前に行われていたことが、復興が始まった後に同じ形で復活するのか。あるいは、これを機に見直しが行われるのか。

   従来のビジネスの中には、効率や効果の視点から見直しが行われるものもあるかもしれません。ビジネス自体が成り立たなくなるおそれもあります。

   一方、節電の取り組みなどとあわせて、ライフスタイルや働き方の変化が起こり、新しい需要が生まれる可能性もあります。

   自粛ムードで仕事がヒマになってしまった人は、復興景気が盛り上がったときに大きな仕事が担えるよう、頭の中でシミュレーションを練ったり、自己研鑽に励んだりしましょう。

   また、「横並び」を逆手に取る方法としては、「この製品を買っていただくことで、災害に備えることができます」とか、「被災地や日本の復興に貢献することができます」といった文脈で需要を喚起できるようなビジネスを考えることです。

   それぞれの仕事の中で、応用できるものは何かないでしょうか。なんだか人の不安につけこんでいるように見えるかもしれませんが、横並びで大打撃を受けてしまったビジネスは、横並びを利用してリベンジしない手はありません。

   モノ不足を起こして価格を吊り上げるなど、他人に迷惑をかけるやり方はすべきではありませんが、「共感できる必然性」を訴え「横並び意識」に乗っていくことは、当面のビジネスにおいて考えるべき要素になりうると思います。

高城幸司

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高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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