「バイトが言うことを聞かない…」20代小売店長の疲弊

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   小売業や飲食業の労働条件を改善すべきと思いつつ、消費者としては「安くていいモノを扱う店」を選ぶ人は多い。解決は一筋縄にはいかない。

   小売店を展開するある会社では、アルバイトが思ったように動いてくれないので、若手店長の負担が大きくなって疲弊しているという。

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「いまのバイトは責任感が低い」

――関西地区に店舗展開する小売業の人事です。先日、ある店舗の店長A君から「もう疲れました。とりあえず1週間休ませてください」と連絡がありました。

   店長になって1年足らず。エリアマネジャーには、たびたび弱音を吐いていたようですが、「ここが頑張りどころ」と励まされていて、A君もそれに応えたいと思っていたようです。

   しかし、仕事の負荷が高い割には、業績が思ったように上がらない。業績が上がらなければ、給料も上がらない。「もう耐えられない」と、人事に直接電話を掛けてきたわけです。

   当面はエリアマネジャーが店長を代行することになったのですが、今後のことが心配です。というのも、同じような悩みを他の店長からも耳にするからです。

   当社は積極展開によって20代店長の人数を増やしており、入社3年目のA君もその一人。

   同じ年代の店長からよく聞くのは、アルバイトが急に休んだり、こちらが来て欲しい日時に入ってくれないので、その分の作業を店長が引き受けなければならないこと。長時間労働になることもあるようです。

「いまどきのバイトは、どうも責任感が低いよなあ」

というグチをよく聞きます。この点、全社的になんとかしなければならないと思っていますが、一体どうしたらいいでしょうか。世代的な問題でしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
バイト管理の「達人養成メニュー」を備えよ

   私は学生時代、アパレル店で長くアルバイトをしていたので、バイトの気持ちが分かります。バイト管理は、ある面で人材マネジメントの基本。必要な人材を選考・確保し、きちんと働かせながら、適切な報酬を支払う。どの要素が欠けてもうまく回らないものですが、これを自然にやってしまう「バイト管理の達人」がいます。20代店長が達人ばかりならよいのですが、そうでない場合には会社として「達人養成メニュー」を準備すべきです。小売りや飲食のチェーン経営の場合には、オペレーションマニュアルとともに事業成否の鍵となります。今どきの若者世代の問題ではないでしょう。

   今回のケースは、何を問題と見るかによって対策が変わります。A君の意欲や能力が低いのか、質のいいバイトを確保するルートが弱いのか、バイトの気の緩みなのか、報酬が低すぎるのか。バイトの統率を強める方向と、権限を委譲するなどして責任感を高める方向の両面のバランスが必要だと思います。

臨床心理士・尾崎健一の視点
「ドタキャンしてもいい」と思われないために

   極論を言えば「同一労働、同一賃金」の考え方に照らし合わせると、学生や主婦、フリーターだからといって、社員と同じ仕事をしているのに安い給料で使っていいというのは、ある意味で会社側の甘えです。「バイトの代わりはいくらでもいるから、安く使ってやれ」と会社が考えていれば、バイト側も「この程度のバイト先ならいくらでもあるから、ドタキャンしていい」と考えるのは当たり前。会社に協力してシフトに入ることも望めないでしょう。

   店長にしかやらせない仕事を除き、他の仕事をバイトに権限委譲する方向で検討してはどうでしょう。時には「この仕事は君に任せたから、自分で考えてやってみて」と促します。店の目標を共有し、クリアしたら一時金を上乗せして払うとか、貢献に応じて表彰するとか。社員任用への道を開くことも効果的です。好循環が生まれれば、バイトのやる気が高まり、業績向上を図りながら店長の負担を軽くする一石二鳥となるでしょう。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
野崎大輔・尾崎健一:黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術
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