震災の影響による電力不足が予想される中、エコ製品として開発された新しい「太陽光発電システム」が注目を集めている。
次世代型といわれる「CIS太陽電池」は発電性能に優れ、軽量で耐久性も高い。すでに個人住宅のほかに、工場などの産業分野や公共施設でも導入が進んでいる。
「次世代型」は厚さ100分の1、発電性能アップ
首都圏で実施されている計画停電は、少なくとも今年夏まで続き、猛暑時のピークである6000万キロワットの確保は困難と見られている。病院や養護老人ホームはもちろんのこと、オフィスや一般家庭でも対策が必要となるだろう。
そこで注目されているのが、太陽光発電だ。夏場の強い日差しを利用すれば、停電が発生しても昼間なら発電中の電力を使うことができるし、蓄電池と併用すれば夜間でも電源を確保できる。
特に最近登場した「CIS型」といわれる次世代型のパネルには、期待が集まっている。銅(Cu)やインジウム(In)、セレン(Se)を原料とし、シリコンの原料不足などに影響されずに安定して製品を作ることができる。
原料の変更により厚さを100分の1に圧縮し、軽量化を実現。発電性能にも優れ、現時点で従来製品より1割程度高い発電量が得られている。
従来製品のようにパネルの一部に影ができると全体の出力が絶たれることもなく、CIS型では安定した発電ができるという。素子が黒いため、太陽光の吸収率も高まった。
開発したのは、昭和シェル石油グループのソーラーフロンティア。過酷な条件でも劣化が少ない耐久性も兼ね備えており、「20年間の出力保証」を打ち出しているのは国内メーカーでも同社だけだ。
「変換効率、これからも伸びる」
2011年2月には宮崎・国富第3工場で、太陽光発電パネル工場としては世界最大規模の稼働が始まっている。太陽光発電の研究に20年以上携わっているソーラーフロンティア執行役員・技術本部長の栗谷川悟氏は、
「CIS型は発電量が多いのがメリット。自宅で実際に使っていただければ、実感していただけるはず。CIS型の変換効率は、これからも伸びる余地がある」
と自信を示す。
現時点では、住宅や工場のほか、宮崎県の幼稚園や町立体育館、愛媛県の銀行や岩手県の養鶏所などで導入が進んでいる。
昭和シェル石油では、太陽光発電システムと蓄電池システムを組み合わせて設置した「災害対応サービスステーション」を設け、停電時でも緊急車両への給油が行える体制を整えつつある。
住宅に設置している顧客からは、今回の計画停電中でも電力が使えるので「導入しておいてよかった」という声が届いているという。