「理系出身者は文系出身者よりも給料が高く、正社員や会社の役職者になる割合も高い」――。そんな内容のレポートが話題を呼んでいる。
2011年3月1日に経済産業研究所(RIETI)が発表した「理系出身者と文系出身者の年収比較」。全国の成人男女を対象とした調査結果を分析したものだ。
「理系出身者の方が付加価値額が高い」
分析対象とした1632人(平均46歳)の平均年収は、文系学部出身者が559万円、理系学部出身者が601万円で、理系が42万円上回った。
学部出身者で比較すると、国立大卒の理系男子の年収は、30歳では文系男子とほぼ同じだが、40歳では100万円、50歳では150万円近く上回る。
国立大以外の理系男子は、30歳では文系男子より100万円ほど低いが、40歳で肩を並べ、50歳以降は50万円を超える差をつけて逆転している。
正規社員の割合は文系60.1%に比べて理系82.4%、正規社員における役職者比率は文系20.3%に比べて理系35.0%と、いずれも上回っている。
この結果について、レポートは
「理系出身者の方が、文系出身者よりも生産している付加価値額が高いことを示唆している」
と評価し、今後は教育課程の中で理系的能力の養成を重点化して進めていく必要があると結論付けている。
この結果に、ネット上では「当然だ」「文系有利と言われているが、やっぱり違ったか」という意見が相次いだ。ある人は、大学のキャンパスの様子から「理系は文系に比べて、はるかに多くの時間を勉強に研究に費やしている」と指摘し、なぜ文系の方が高給と言われているのか、もしそうであればおかしいと矛盾を感じていたという。
職業選択の幅にも違い
今回の調査は2009年に実施。文系理系の生涯賃金の差については、1998年の大阪大学による調査結果「文系が5000万円高い」という説が知られていたが、バブル崩壊後を挟んで10年間で「定説」が変わった可能性がある。
この理由についてレポート作成メンバーであるRIETIファカルティフェローの西村和雄氏は、
「バブル期には、銀行・証券会社の給料がメーカーよりも高く、それが文系理系の差にも反映されていた。現在ではIT関連業種で、理系学部出身者が社長や取締役の多数を占める企業も増えている」
としている。
また、「週刊東洋経済」(2011.3.19号)が「DODA」の協力を得て転職サービス登録者の調査を基に推計したところ、生涯年収は理系で2.25億円に対し、文系は2.10億円足らず。1500万円以上の差がついた。DODA編集長の美濃啓貴氏は「モノ作りのできる技術者は営業職に就けるが、文系出身の営業マンは専門的な知識や経験がないので技術者にはなれない」と、職業選択の幅の違いを指摘する。