昨年、6500人の契約社員を正社員化した日本郵便が、今度は数千人規模で彼ら非正規の雇い止めをするという。既に1200名の新卒採用凍結は発表していたが、それでも足らずにクビを切るわけだ。「正社員化→新卒採用凍結→非正規クビ」という、絵に描いたような三段落ちである。
経営状況を無視して、コスト増につながるような規制をかければどうなるか。「小泉改革のせいで格差拡大」とか「規制強化で雇用が増える」とかトンチンカンな主張をする人たち向けの、日本郵便の皆さんによる体を張ったシミュレーションと言えるだろう。
有期雇用契約の規制をすれば正社員が増えると本気で信じている共産党、社民党、日弁連、そして厚労省の皆さんは、彼らの犠牲に感謝しつつ、現実というものをしっかり学びなさい。
支持すべき政党の「政策」見極めよう
とはいえ、こんなことは民間企業で働いたことのある人間なら誰だって知っている常識だ。問題は、これが経営上の判断でも社会保障政策の一環としてでもなく、政治的動機で行われたということだ。
自民党を追い出された老人が中心になって立ち上げた国民新党には、これといった支持基盤がない。そんな彼らにとって、100万票とも言われる郵政票は、一定の組織票が見込める唯一の票田であり、ここをどうつなぎとめるかが党の命運を左右する。
正社員登用枠の設置は、現場で働く契約社員はもちろん、組織力強化につながる労組にとっても魅力的な話だ。
そもそも、パートの正社員化を主張した国民新党・亀井代表は、同じタイミングで「そのコストねん出のための消費税免除」も合わせて要求している。
つまり、彼らは、正社員化でコストが増えるから、その分はなんとかしてメンテしないといけないと理解はしていたわけだ。
そう考えれば、国民新党による「国民の税金を使った政治活動と、その挫折」というのが、今回の茶番劇の本質だろう。理念も何もない政治屋の悪あがきほど見苦しいものは無い。
もし、選挙では国民新党を応援したのに、今回雇い止めにされてしまったというパートさんがいたら、あなたが支持するべきは、「正社員の解雇規制緩和」と「同一労働同一賃金の実現」をセットで提案する政党だ。
一応、みんなの党と自民党が(人前では言いたがらないけれども)該当する。支持者が声を挙げれば、彼らももう少し大きな声で答えてくれるだろう。
城 繁幸