自分の会社に対する「愛社精神」や働くことに対する「モチベーション」は、入社前の学生よりも入社後の社会人の方がずっと低いことが、毎日コミュニケーションズの調査で分かった。2011年4月入社予定の「内定学生」300人と、入社2~5年目の「若手社会人」293人を対象とした意識調査による。
仕事は増えて毎日終電「愛ってなんですか?」
内定学生に、入社予定の会社に対して「愛社精神はありますか」と尋ねたところ、「非常にある」「まあまあある」と答えた人が81.0%にのぼった。一方、若手社会人では45.0%にとどまっている。
「働くことに対してモチベーションはありますか」という問いには、内定学生では「非常にある」「まあまあある」が90.3%だったのに対し、若手社会人では55.2%だった。
同じ人に時間を置いて尋ねた調査ではないため、「会社に入ると愛社精神もモチベーションも下がってしまう」とは必ずしもいえないが、ネット上には、入社して実態を知れば意識が変わるのは当たり前という意見が相次いでいる。
「使いぱしりにされるのに愛社もクソもないやろ」
「先輩の給与額を知って夢も希望もなくなるのかね」
「社員を愛していない会社が社員から愛されると思うなよ」
高度成長期と比べ、労働条件が大幅に下がったことを理由に挙げる人も。
「終身雇用と定期昇給。この2つなくして愛社精神は生まれない」
「御恩と奉公というものがあってだな、ロクに労いもしないのに忠義心なぞ芽生えるか」
「今の倍くらい給料がもらえればそんな素晴らしいもんも湧き出るかもしれない」
「給料下がる、手当て削られボーナス出ず。仕事は増えて毎日終電。愛ってなんですか?」
世の中が変わったのではなく、「最近の若者は非常に観察眼が鋭く、洞察力が鋭い」から、おかしなことに気づくようになっただけと指摘する人もいた。
押し付け目標では「責任意識が生まれない」
一方で、労働条件の問題だけでなく、日本企業が生み出す製品やサービスの魅力や競争力が落ちたために、そこで働くことに対する誇りを失ったのではないかと考える人もいる。
「日本の製造業の開発部門の社員より、フェラーリの縫い工のおばちゃんのほうが、遥かに愛社精神があるだろうね」
「縫い工」とは、自動車シートの縫製をする人のことか。確かに、製品に対する愛着や、会社が掲げるビジョンへの共感、社会的に有意義な事業をする会社に勤める喜びなどの要素は、個人的な報酬以外であっても「愛社精神」や「働くモチベーション」の高さに影響するかもしれない。
「日本の企業は、ビジョンについて意見を述べ合う機会も不足してる。押し付けられた目標では、当事者たちに責任意識が生まれない」
という指摘は、納得性が高い。
ただ、こういう結果になったのは「入社2~5年目」を対象とした調査だからであり、悲観するほどでもないという意見もある。都内に勤務する30代の男性会社員は、こう分析する。
「入社して周りが見えてくれば、一時的に不満が高まるのは健全。さらに社歴を積めば、自分が問題を解決する側に回り、うまくやれば処遇がよくなり権限も大きくなる。仕事に対するプライドや責任が高まってくれば、愛社精神やモチベーションも自然と高まってくるんじゃないですか」