先日、知り合いの30代女性が合コンを主催したところ、30代男性の集まりが悪くて困ったそうだ。「やる気あんの?」とお怒りだったが、確かに周囲の30代には、まったく結婚の予定も予兆もない男性というのは結構いる。「したいけど金がない」とか潔癖症とか2次元じゃないと云々とかそういうのを除いても、少なくとも1割くらいはいるんじゃないか。
たまに「俺は独身貴族だ」なんて自分で言い張る人もいるのだが、どう見ても貴族というよりは平民である。たまに合コンなどに顔を出しても、たいていはニコニコして座っているだけだ。押しても引いても反応がない、という点で草食系以上である。というわけで、個人的にはその手の30代男子は「置き物系」と呼んでいる。
結婚を遠のかせた「会社共同体の崩壊」
ところで、彼ら置き物系には、以下のような特徴がある。
・そこそこの学歴がある。
・世間的には一流と呼ばれる大企業で真面目に働いている。
・転職やキャリア開発といった言葉には反応しない。
・女っ気がからっきしである。
こういった特徴から見えてくる人物像は、典型的な優等生タイプだ。思うに、彼らは進学校、大学、就職と、なんとなく目の前にそれっぽい選択肢が用意される人生をずっと歩んできているはずだ。でも結婚というステージだけは勝手が違っていて、何をして良いかわからずに途方に暮れているのではないか。
いや、以前は結婚という段階でも、お膳立てというのはあったのだろう。まだ家制度が機能していた頃は家族や親せき、場合によってはご近所という共同体単位で世話を焼く人がいたし、高度成長期以降は会社という共同体がそれを代替してきた。
「一般職はお嫁さん候補」という事実は、90年代の商社や金融などは人事が明言していたし、それを期待して門をたたく一般職希望者も多かった。「上司の紹介」「上司が仲人」なんて言葉はさすがに死語だが、80年代までは割と普通に行われていたことだ。
でも、そういう共同体はすでになくなってしまった。最近は一般職を採用するほど太っ腹な企業は少なく、出会いの機会は大きく減った。上司もいちいち部下の下の面倒まで見ちゃくれない。学校→会社というレールには辛くも滑り込めたものの、結婚というオプションサービスはすでに廃止されていたわけだ。
さて、コラムのオチとしては、
「自分の殻を破れ!婚活しろ!」
とでもまとめなきゃならないのだろうが、僕の経験上、置き物系男子は何を言われようが絶対自分からは何もしないと思われる。
なので、ここはひとつ、肉食系女子の皆様に頑張って捕食していただきたい。なかなか捕まらないとは思うけれども、一回捕まえてしまえば、これほど手のかからない旦那もいませんよ。
城 繁幸