悪質なセクハラ被害 どこに駆け込めばよいのか

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   セクハラは、一時ほどあからさまに行われることはなくなったとはいえ、水面下で被害に苦しんでいる人は今もいる。しかし、被害を受け付けてもらえると期待した窓口から、意外にもつれない扱いを受けることがあるらしい。

頼った労基署「自分で会社に訴えて」

いまも密室で行われている悪質なセクハラ
いまも密室で行われている悪質なセクハラ

   労働政策研究・研修機構がまとめた研究報告『個人加盟ユニオンの紛争解決』(執筆は呉学殊・主任研究員)。このレポートで紹介されている3つの労使紛争の事例は、いずれも目を疑うような悪質なセクハラである。

「専務にスカートをめくり上げられ、キスをされ、胸を触られ、・・・(専務は)横でマスターベーションを始めた」
「突然力づくで人通りのない袋小路へ連れ込み、抱きついて体中を触り、スカートの中に手を入れて尻を揉む行為をした」
「胸を触ったり足を触ったりしてくるので、『やめて』といっても、部長は、『いいじゃない、これも仕事だよ』と笑いながら言い、やめなかった」

   これらの行為は、単なる嫌がらせの範囲を超え、刑法の強制わいせつ罪にあたり、加害者は逮捕されるべきだと考えるのが自然だ。しかし現実には、被害届を出したり告訴したりしようとしても、警察が受理を保留することも少なくないという。

   みらい総合法律事務所の辻角智之弁護士は、その実態について説明する。

「警察は他の事件に人員が割かれていることが多く、傷害など被害が分かりやすい場合を除き、個人間の争いはできるだけ当事者同士で処理して欲しいという意向があります。また、密室など第三者が見ていない場所で行われるセクハラには客観的な証拠が残っていない場合が多く、被害届などを受理しても強制捜査になかなか着手しない場合もあるのです」

   いったん動き始めれば、強制捜査によって個人では収集できない証拠を入手することも期待できるが、すべてのセクハラで対応してもらえるとは限らない。仮に加害者が刑事事件で有罪となっても、被害者には賠償金は入らず、民事訴訟を別途起こす必要がある。

   同様に、労働基準監督署や男女雇用機会均等担当部署などに相談しても、必ずしも被害者の立場での解決が期待できるわけではないようだ。レポートにも、行政窓口で

「ご自分で内容証明を(会社に)送ってください」
「互いに来てもらって、(会社が)謝って、何か書類書いて終わりです」

としか言われずショックを受けたという例が載っている。

信じられるのはユニオンか弁護士か

   とはいえ、会社に対して被害を直接訴えても、解決が果たされないばかりか、余計に傷つけられる場合もある。特に自浄作用のない零細同族会社などでは、社内解決の道は事実上閉ざされていると言ってもよいだろう。レポートには、

・会社や加害者が「被害妄想」「証拠を示せ」と開き直ったり、「会社に迷惑をかけるな」と脅したりするケース
・同僚たちに「退職したのは病気のため」「(加害者を)離婚させるために面白がってる」とウソの噂を流したりするケース
・社内告発を機に嫌がらせを受け、被害者がパニック障害に陥ったり、手首を切る事態にまで至るケース

などが載っている。

   レポートによれば、このような場合の相談窓口には、個人で加盟できる労働組合(ユニオン)も選択肢になるようだ。ユニオンに入った被害者が会社と「団体交渉」を行い、資料の交付や謝罪を要求し、労使協定を通じて解決金が支払われることもあるという。

   ただし、すべての個人加盟ユニオンがサポート力を備えているとは限らない。その点では、各都道府県の弁護士会が設置する「法律相談」の窓口は確実性が高い。無料または比較的安価で、解決の方向性を助言してくれる。

   法律相談以上のことを弁護士に依頼したら、どのような展開になるのか。前出の辻角弁護士によると、依頼者の意向に沿った訴訟手続きをサポートしてくれるという。

「弁護士は依頼者の代理人として、資料を揃えて会社と交渉します。示談に至らなければ、民事訴訟や労働審判などの法廷の場で会社と争い、決着をつけることもできます」

   また、裁判よりも短期間に問題を解決する方法としては、個別労働関係紛争に関する「裁判外紛争解決手続」があり、本人の申し立てのほか、労働問題に詳しい特定社会保険労務士に代理人となってもらうこともできるそうだ。

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