なんでも内閣府の関係機関である日本学術会議が、卒業後も数年間は新卒扱いにするよう政府に提言したらしい。これが通れば、とりあえず今年卒業して既卒になってしまった8万人も、来年再来年くらいは「新卒です」と名乗れるわけだ。おめでとう!
提言の恐るべき破壊力
正直にいうと、「日本型雇用自体にメスを入れない限り、新卒至上主義はなくならない」と視野の狭いことを言ってきた僕としては、学術会議のセンセイ方のスケールの大きさにただ驚くばかりである。だって、
「そんなの、みんな新卒にしちゃえばいいじゃない」
という発想ですよ。目からうろこが落ちました。
というか、もうここまできたら、この素晴らしい発想を他にも転用出来ないだろうか。
元祖氷河期世代、35歳くらいまでの人間も新卒にしちゃうというのはどうだろうか。彼らなんて今でも結構大変なわけだし。
いや、中高年失業者こそ再就職に苦しんでいるわけだから、もう何歳でも「新卒」と名乗ることを認めてあげよう。うん、きっとみんな大喜びに違いない。
ついでに、男女雇用機会均等法改正しても一向に縮小しない男女格差についても、同じ手法でアプローチするのはどうか。つまり、みんな「男です」と申告させるわけだ。「○子」とか「○美」とかどうするんだと言われそうだが、大企業なんて一々下の名前なんて見てないから大丈夫。
僕の後輩で、ネットからエントリーシート送る時に間違えて「男」にチェックしてしまい、ある銀行のOBに「ふざけるな、こっちは男で手いっぱいなんだよ」と怒鳴られた女の子がいたのだけど、こういう不幸な事故も無くなるわけだ。
そうそう、みんな学卒で申告させてしまえば、ポスドク問題も解決するはず。インド哲学だろうが東アジア現代史だろうが、好きなものを好きなだけ勉強してから就職するといい。
老若男女が入り乱れて面接
最後に、ちょっとだけ面接の様子を想像してみよう。
トヨタ自動車とか三菱商事とか、みずほ銀行とか、錚々たる大企業の面接会場は、きっと老若男女で大賑わいとなるはずだ。
20代の学生も50歳のおっちゃんも、40代で子育ての一段落した女性も、みんな「新卒男子、学部生です」と名乗って仲良く面接を受けるわけだ。
もちろん、誰を採用するかまでは干渉できないから、最終的には「20代前半のぴちぴちの男の子」ばかりが内定を独占し、申し訳程度に数人ほどルックスの良い女性が滑り込むという状況に落ち着くかもしれない。
でも、春先に同じようなスーツを着た同じような年齢の若者だけで出来た列を見せられるよりも、何だかそっちの方が楽しそうな気がするのは筆者だけだろうか。
城 繁幸