マニフェストをひと通り見ていくと、一種の流行りがあるのがわかる。
今回の流行は「増税」。それも消費税引き上げ、法人税引き下げが一つのトレンドとして見て取れる。従来はタブーとされてきた増税論議が一気に噴き出したのは、有権者の側で財政危機に対する懸念が高まったためだろう。
自民党・みんなの党・社民党は「流動化三銃士」
要するに、政治というのは有権者の鏡であり、マニフェストを見れば自分たちの姿がぼんやりと見えてくるのだ。良い悪いは別にしても、下手なニュースを読むより社会の流れがよくわかるので、無党派層を意識している政党のものは読んでみることをおススメする。
それと、もう一つ重要な変化があった。自民党が
「解雇規制の緩和」
と明記したことだ。このことは、少なくとも自民党という前与党がマニフェストに取り入れるほど、労働市場の流動化論が力を得ているという事実を示している。
ただ少し残念なのは、なんだか後ろの方に、こそっと混ぜているように見えること。もっと堂々と前に出していくといい。
「労働者の生活を守れ!」といって包囲網作ってバッシングされるのを警戒しているのかもしれないが、心配はいらない。他にも流動化を支持する味方はいる。
まず、みんなの党が代表だ。マニフェストこそ
「正規雇用と非正規雇用の流動化」
と、ぼかした表現を用いているが、以前から労働市場の流動化にはたびたび言及している。良き理解者になってくれるだろう。
それから、マニフェスト記載どころか、すでに「身内で流動化を実践」してしまっている社民党は、頼れる切り込み隊長といったところだ。
マニフェストでは「正規雇用の維持」なんてうたっているけど、(日産は別に解雇はしてないから)首切りの過激さでいえばカルロス・ゴーン以上だ。
「リストラする経営者ほど立派というのは大間違いだ」
という菅総理のいわれなき批判に対して、職員4割の首を切った福島みずほ代表は、ゴーン社長以上に憤りを感じておられるに違いない。
というわけで、自民党は積極的に雇用問題で民主党を追及するといいだろう。
「就職氷河期は作らないという方針と、国家公務員の新卒採用4割カットは矛盾するのではないか?」
「同一労働同一賃金は、どのようにして達成するのか?」
この2つの質問だけで、党首討論はずいぶんと面白いものになるはずだ。
城 繁幸