先日、リクルート社の出した「大学生の就職志望企業ランキング」で、日本郵政グループが4位につけていて驚いた。再国有化や郵貯上限額の引き上げで、一躍旬の企業に駆け上がったのだろう。ソフトバンクでもトヨタでもなく、今の若者にとって一番クールな会社は郵政グループということだ。
両者ともセリフ棒読みの大根面接
22歳という若さ、そして無限に広がる可能性。青春のすべてを郵政にぶつける若者たち。
「僕らだけは終身雇用で守ってください!」
そんな学生の熱き想いは、元公務員である面接官たちもよく理解している。自分たちも若いころ、同じような熱き想いに身を焦がした身だからだ。なんたって黄金の80年代あたりに旧郵政省に入ってるんだから、安定志向で言えば今の学生よりずっと上。石橋をほふく前進するような立派な先人達である。
彼らは、後輩たちに厳しい姿勢で臨むはず。
「これからのビジネスは、自分で動ける人間が求められてるんだよ」
といって、学生たちに将来のキャリアデザインやビジョンを質問する。当然、自分たちは持ってないが、そんな素振りは一切見せない。
「そ、それは……」
おのれの未熟を恥じ、必死に郵政志望の動機と自己PRを創造する若者たち。
「僕は昔から郵便局員があこがれでした」
「理想の男性は亀井さんです」
そうして、先輩たちをも感動させる小話を考えだせた若者だけが、栄えある日本郵政職員として郵政ファミリーに迎えられる。郵貯限度額引き上げで、国の未来は暗いが組織の未来は明るい。もちろん、選挙では国民新党&民主党を全力応援だ。
やる気のある奴は最初から落とせ
さて、以上のように国家のバックアップと若い人材の確保で、郵政の将来は安泰だと思われるが、せっかくなので一つ提案しておこう。実は、「職が安定してさえいればそれでいい」という人材は少数派である。人生には安定以外にもいろいろな幸せがあり、結局はそれを見つけられるのは自分自身でしかないのだ。
いくら見栄を張って「優秀で前向きな人材」を採っても、それに後から気づいた若者から3年で辞めていくことになる。そしてそれは、組織にとっても若者にとっても無駄だろう。
なので、面接では建前を捨ててガチンコでいくといい。親方日の丸な組織には、言われたことしかやらない、有給休暇や残業のことばかり聞いてくるような人間がおススメである。
「先輩はどうしてバブルの頃にお役所なんかに入られたんですか?」
「仕事楽そうだったし、潰れないからね」
「いいすねぇ、それ!」
素晴らしい。なんて有意義な面接だろう!
「そんな連中ばっかりで、組織のかじ取りはどうするんだ?」という質問も出そうだが、その点は心配無用だ。なぜなら、ユニバーサルサービスなるものを維持するために今後生じるであろう莫大な損失は、国民の税金で自動的に補てんしてもらえるから。日本国が破綻するその日までね。
城 繁幸