若者は「賢く」なったけれど「幸せ」そうには見えない

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   僕の学生時代、周囲には結構いろんな考えのヤツがいた。

   「俺はフリーターやりつつ何年か旅をしたい」と言って、卒業後もフリーターやりながらバックパッカーもどきをやっていた友人がいるが、30超えた今でもフリーターに定着している。

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「2、3年好きなことやってみろ」なんてとても言えない時代

   卒業後、27歳まで司法試験を目指していた男は、途中でイヤになったようで就職しようとあちこちお願いして回っていたが、結局ムリだったようだ。今は音信不通らしい。

   「新卒でこけたら人生が終わる」というのは今でこそ常識だが、当時はまだそこまで一般的ではなかったので、どこか詰めの甘い連中が多かった。

   日本企業は昔から新卒至上主義なので、いったん新卒時に正社員というレールから外れると、生半可な踏ん張りではレールには戻れない。もちろん不可能ではないが、人並み以上の努力が要るので、自分からそういう選択をするようなヤツはまずやらない。かくして、若気の至りは人生最大のターニングポイントとなってしまったわけだ。

   現在、さすがに「既卒になるとまずい」という認識は浸透したようで、安易に内定ゼロで卒業する人は聞かなくなった。大学もいろいろと対策を講じ、内定取り消しなどをされると、学費免除で留年させてくれたりもする。

   それでも、やはり一部には「中小や零細に行くよりは、派遣でも大手に行ったほうがいい」という人がいるのも事実だ。

「アホだけど面白いヤツ」がいる方が健全だ

   僕は決してそういう価値観を否定はしないし、フリーター的な生き方も好きである。 ただ、その後の正社員キャリアを描いているのであれば、最初は規模にこだわらずに正社員になることをおススメする。

   どんなに小さな企業でも、正社員の職歴があれば、大手でも選考のまな板には載せてくれるものだ。3年後の選択肢はぐっと増えるだろう。これはキャリアに限らない話だが、進むべき方向がわからない時は、基本的に選択肢を増やす方へ進んでおけば損はない。

   ところで、今年の春の新入社員は、終身雇用を望む比率が過去最高らしい(日本生産性本部調査)。新卒至上主義というのは、プロ野球で言うと、1回の攻防で勝敗を決めるようなものだ。2回からはリスクを取らずにちんたら過ごしていきたいと、勝った方が思ってしまうのも仕方ない。彼らはきっと、アホな90年代世代を教訓に、賢く進化したのだろう。

   “フリーター志望”の彼は、アホだけど人間的には面白いヤツだった。ああいう若者が減っていく社会は、果たして長期的には進歩するのだろうか。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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