いくら大事なお客様へのメールであっても「謹啓 時下ますます・・・」と始める人は、もういないだろう。文書に比べ、メールは簡潔な表現が歓迎され、カジュアルな表現が堅苦しくなくてよいとされる。しかし、どこまで崩してよいものなのだろうか。
「敬意」が落ちてしまうので漢字で書くのが無難?
客先で名刺交換をした後に、会社に戻ると「○○さま 本日はお忙しいところ・・・」とメールをいただくことが増えた。その対応の速さには驚くが、会ったばかりの人にいきなり「さま」というのは、不快というわけではないが、やや違和感を感じないでもない。
Q&Aサイトの「Yahoo!知恵袋」にも、社外宛には「さま」、社内宛には「どの」と、ひらがなで敬称をつけている人からの質問が掲載されている。質問者はビジネスメールでは漢字の「様」「殿」を使うべきと指摘をされたらしく、「本当ですか?」と尋ねている。
この質問には、「指摘してくださった方のおっしゃる通り」という回答があった。ひらがなで表記すると、敬称の「敬意」がかなり落ちてしまうので「漢字で書くのが無難」ということだ。相手を特別に敬う必要がなくても、くだけ過ぎという印象を抱かせてしまうのは望ましくない。
「ひらがなは主流になりつつある」という意見も
一方、敬称の「さま」は主流になりつつあるという意見もある。神舘和典氏の『「メール好感度」を格段に上げる技術』(新潮新書)によると、いまでは「さま」に対する抵抗はかなり薄れているので、相手が年配の男性や恩師だったりしない限りは使ってよいのではないか、ということだ。
「さま」が増えた理由は、漢字の「様」では、相手に堅いイメージを与えるとともに、メールの書体は字間が詰まっているので読みにくいからではないかという。そして漢字を使う場合でも、
「青木卓也 様」
のように、名前との間に半角スペースを空けると読みやすくなるとしている。
さらに、日常的に交流のある相手や、同世代の同業者などに対して「さん」付けにすることも提案している。そのときに、
「木原さん、お世話になっております。」
「篠崎さん、お元気ですか?」
など、ひと言付け加えると印象が変わるという。
とは言っても「読みやすさより内容」という人もいるので、表現は相手を見て変える必要がある。これまでのやり方を変える勇気が持てない人も多いだろう。それでも全体としては、ビジネスメールはさらに「カジュアル化」の方向に進みそうだ。