リーダーシップというと、メンバーの先頭に立って引っ張っていくイメージがあるので、凡人は「自分はそんな器ではない」「厚かましくみられたくない」「面倒だ」と尻込みしてしまいがちです。しかし、リーダーの役割を「グイグイ引っ張る人」ではなく、「チームの目標を達成するためによい影響を与える人」と考えると、凡人でも活躍の可能性が出てきます。
小さな仕事でも「リーダー」気分でやってみよう
私は前職で、毎月の管理資料を全国の支社に送付するという仕事を一人で担当していたことがあります。しかし、他の仕事が増えて忙しくなってきたこともあり、派遣社員の方に手伝ってもらうことになりました。
ここで目標にしたのは「どのようにすれば、正確かつ短時間に仕事を終えるか」ということでした。そして気づいたのは、仕事を手伝ってもらう人に、いくらこのことを強く指示・命令をしたとしても、それだけで結果が出るわけではないということです。
そこで、お互い協力して気持ちよく仕事をするために、コミュニケーションを工夫しようと考えました。特に、全部自分で決めて自分が引っ張るのではなく、一緒に働く相手から意見を聞いて、よりよいやり方を考えるようにしました。
相手は「自分の意見を聞いてもらえた」「受け入れられた」と感じると、自主的に仕事をしてくれるようになり、いつしか仕事をすべて任せることができるようになりました。小さな作業ですが、私にとってはとても良い経験になりました。
このように、いろいろな仕事を他人に任せることを積み重ねていくうちに、「あいつはうまく人をまとめて仕事をする」と思われるようになり、新たな仕事を任されるようになりました。
リーダーを経験すると「上司」の大変さが分かってくる
重要なのは、誤った越権行為をしなければ、肩書きにこだわらず自分からリーダーの視点で他人と積極的にコミュニケーションをとることです。このことは、自分が本当のリーダーや管理職になったときに役立ちます。
「チームの目標を達成するために」よかれと思ってやったことも、思い通りに行かないことがあります。「何でオレがこんな思いをしなければならないんだ」と思うこともあります。これは、いわゆる「上司」という立場にある人に付きものの経験です。
リーダーを経験すると、上司の大変さが分かってきます。すると、意味のない反骨精神で上司に逆らったりせず、
「みんなの成果を上げるために上司に協力しよう」
と思えるようになったり、上司に対して敬意を払えるようになってきます。
このような態度は上司にも伝わるので、あなたに対して親近感を持ってもらえます。目的意識を共有し、上司との会話もかみ合うようになります。経験者との会話から学ぶことが多くなるので、一層リーダーの意識が高くなるのです。
これによって自分自身の成長と、周囲からの信頼を得ることができるのであれば、これほどいいことはありません。
野崎大輔