サンバノー(モンゴル語で「こんにちは」)。人生の“休暇”を1年間もらって世界を回っているアシシです。この旅のミッションは「W杯に出場する32カ国をすべて巡ること」。しかし、2009年7月末の時点では、出場国は開催国の南アフリカ共和国を含め6カ国しか決まっていない。そのため、次のW杯予選の試合がある9月上旬までは、先を急がずにアジア諸国を周遊することにしている。
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「ヨリキリ」「マワシ」という言葉が流れるウランバートル
そんなわけで、われわれが選んだのは「モンゴル」という国である。中国の北に位置し、欧米よりずっと近くにあるこの国は、なぜか日本人にとって馴染みが薄い。日本人観光客数も、韓国、中国に大きく水を開けられている。
日本の4倍以上の国土面積を持ちながら、人口は大阪市とほぼ同じ270万人。サッカーの弱小国で、グアム以外の国から勝ち星を挙げたことがない。このベールに包まれた謎の国を体感すべく、滞在中の韓国ソウルからウランバートルへと飛んだ。
モンゴルの首都ウランバートルは、近年人口100万人を超えて成長を続けている。街並みは中国の地方都市に似ている感がある。到着後、ホテルの周りを散策したわれわれは、衝撃の光景を目の当たりにした。
カフェや定食屋、小さな売店など、のぞいた全ての店のテレビから流れているのは、日本の「大相撲」の名古屋場所の中継だったのだ。タクシーのカーラジオも大相撲。モンゴル語なので理解できないが、節々に力士の名前や「ヨリキリ」「マワシ」「モロザシ」などの相撲用語が、日本語の発音そのままで聞こえてくる。
現地で生活する日本人に聞くと、ウランバートルのテレビ局6社のうち4社が日本の大相撲の生中継を一斉に流しているという。幕内力士42人のうち、モンゴル出身の力士が10人にも上るわけで、本場所中は老若男女問わずテレビに釘付けなのも、当然のこととも言えるかもしれない。
満天に広がる星空を横断する「天の川」の美しさに感動
その後、われわれはウランバートルを後にし、遊牧民邸にホームステイするツアーに参加。水道もトイレもない大草原で、遊牧民が住むゲル(移動式住居)に宿泊した。乗馬の訓練をしたり、家畜の羊やヤギを小屋に連れ戻す作業を手伝ったりしながら、現地の日常生活を体感した。
井戸の水で髪を洗い、家畜の糞を原料に火を起こす遊牧民は、直径1メートルほどの風車で発電をしている。ゲルの中には小さなテレビがあり、ここでも日本の大相撲の中継に家族が一喜一憂している。こんな大草原のど真ん中で、日本の大相撲のテレビ中継を見ることになるとは・・・。日本人にとってモンゴルは「近くて遠い国」だが、モンゴル人にとっては、本場所中の日本は「毎日、目が離せない国」のようである。
草原での現地生活は、初めて経験する貴重な体験ばかり。果てしなく続く草原を馬に乗って駆け抜けたり、満天に広がる星空を横断する天の川の美しさに感動したり、大自然を体感するにはもってこいだ。
入国には事前のビザ申請が必要だったり、直行便の航空料金が割高だったりと、日本人観光客を遠ざけている要因はあるが、余裕を持ってビザ申請をしたり、中国や韓国の旅行と合わせて旅程を組んだりと工夫をすれば、ハードルは自ずと下がる。東京から片道フライト6時間圏内で、こんなに大自然と戯れることができる国はそうない。ぜひみなさんにも、モンゴルの大自然をいつか体感してほしい。
<YouTube>モンゴルで馬に乗ってみた。
アシシ@ウランバートル