「内引き」という言葉をご存知だろうか。コンビニエンスストアなどの店員が商品や金銭を着服する行為をさす。"内なる万引き"だから"内引き"というわけだ。その実態の一端を示すアンケート結果が明らかにされた。
20%が「先輩から内部不正の方法を教えてもらった」
調査結果を発表したのは、防犯カメラの設置をてがけるJNC(東京都新宿区)。2009年4月22日から24日にかけてインターネット上で、コンビニで働いた経験のある10~20代の男女400人にアンケートを実施した。
それによると、「内引き」の現場を目撃したことがある人は27.3%。コンビニバイト経験者の4人に1人が同僚の不正行為を見たことがあるというのだ。また、「先輩から内部不正の方法を教えてもらったことがある」という人も20.8%にのぼった。
このような数字について、JNC市場開発部門リーダーの伊藤英紀さんは、
「防犯カメラの営業活動を通じての実感が裏付けられた。これまで内引きに関する統計調査はほとんどなかったので、実態を示すデータが明らかになった意味は大きい」
と話す。
「内引き」があってもクビにできない苦しい事情
内引きの内容はどうか。アンケート結果によれば、多かったのは"飲食系"で、「店内食品の飲食」が64.2%、「廃棄物の飲食」が61.5%と高いパーセンテージを占めた。その理由について、JNCは「手軽にできてしまうことで件数が増えている」と推測している。
飲食ほどではないが、「金銭の着服」(20.2%)や「商品の着服」(23.9%)もかなりの範囲で行われていることが判明した。
「商品の着服で多いのは、タバコ。バックヤードでカートンごと抜き取って、友人に安く売ったりしているらしい。ほかでは、携帯電話の充電器やCD・DVDなど単価の大きいものが狙われる傾向がある」(JNCの伊藤さん)
このような内引きに対して、コンビニ店側はどう対応しているのか。アンケートによると、解雇処分に至ったケースは13.8%にすぎず、厳重注意にとどまった場合が31.2%もある。それ以上に多いのが、「店舗に知られてない」(42.2%)だ。内部の不正を正確に把握できていないコンビニの実態がうかがわれるデータである。
「コンビニの多くは慢性的な人不足で、求人広告で募集してもなかなかバイトが来てくれないことが多い。そのため、内引きがあっても切るに切れないという事情がある」
と伊藤さんは話している。