5勝5敗――。これまで何度か転職を重ねてきた、僕自身の就職面接の結果です。仲良くなった担当者から突然電話で「今日はとても心苦しい話をしなければならない」と切り出されたこともあるように、合格通知と同じ数だけの不合格通知をもらってきました。
いまは採用する側として多くの方と面接する立場になりましたが、テーブルの反対側に座るようになって、ずいぶんと見方が変わりました。今回は、一人の面接官として、いまの僕がどのように面接をとらえているかについて書いてみます(募集職種について基本的な経験や適性があること、人柄が明るくて感じがよいことなどは、大前提とします)。
よそいきの顔でなく「パジャマ姿の週末の顔」が見たい
会社が行う採用面接の目的はただひとつ。「この人と朝から晩まで一緒に仕事をしたいか」という問いに対して結論を出すことです。そのためにはその人の飾らない素顔、人物像をできるだけ正確に理解したい。例えるならば、とっておきのパーティのために着飾ったよそいきの顔を見ることではなく、週末のパジャマのような服装で近所のスーパーに買い物に行く姿を見たいのです。
したがって、面接でもっとも大切なことは、限られた時間のなかで自分の長所だけではなく、短所や苦手なことまで含めた、人間臭い、愛嬌ある自分の多面的な素顔をどこまで伝えきることができるか、という点にあると思います。
まず、自分がアピールポイントだと思っている点は、聞いている方からすると、それほどアピールになっていないことが多い。学生であればサークルのリーダーをやっていたとか、中途採用であれば優れた営業成績を残したなど、それはそれでよいのですが、誰しも多かれ少なかれ何らかの「実績」は持っているわけで、その優劣によって採用が決まるほどでもありません。
むしろ時間を使って準備すべきは、「チームワークに優れている」「コツコツやるタイプ」といった長所についての抽象論ではなく、それを伝えるための具体的ないい「小話」を用意しておくことでしょう。そのエピソードの選び方ひとつに、その人の世界観やセンスなど、多面的な素顔があらわれるように思います。
就職面接は「マーケティング」ではなく「会計」である
僕は面接のなかで必ず「短所はなんですか」という質問をします。すると、
「人に任せられず、つい頑張っちゃうところです」
「几帳面で完璧すぎるところです」
という答えをされることがあるのですが、これは本当の短所ではない気がします。短所とは、自分でも認めたくない弱点のこと。そして面接で確認したいのは、短所の内容そのものよりも、それと本人がどれくらい正確に向き合っているか、なのです。
また、「小学校や中学校のクラスの中で、どんなキャラでしたか」という質問も好きです。それは、年齢によってあまり変わることのない、人間集団のダイナミズムにおけるその人の立ち位置を知るには格好の材料であることが多いからです。
ある人が、面接は「マーケティング」ではなく「会計」であると言いました。つまり懸命に長所を売り込もうとするのではなく、短所も含めたありのままの人間性について限られた時間のなかでいかに表現できるか、が勝負なのです。
相手の誘導には乗らないぞ、などと身構える必要はない。そう考えるようになってから、僕自身が就職面接に望むときにも緊張しなくなりましたし、不合格通知にがっかりすることも減りました。また、採用にあたっても基準が明確になりました。結局は「己を知る」ことなのです。これから就職面接に望む人には、そんな視点ももってもらいたいと思います。
岩瀬 大輔