30前後の仕事真っ盛りの独身男性2人が、FIFAワールドカップに出場する32ヶ国を、1年をかけて訪問。「世界を旅する醍醐味」と「サッカー日本代表を応援する面白さ」を現地からレポートする。第1回目は、日本代表のワールドカップ出場がかかった「ウズベキスタン戦」の会場からの第一報だ。
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練習風景を見学後に現地料理「シャシュリク」を堪能
シルクロードのオアシスとして、中央アジアで栄華を誇ってきた街、タシケント。ウズベキスタンの首都であるこの街は、2010年に開催される南アフリカワールドカップ出場の切符を賭けて、サッカー日本代表がウズベキスタン代表と戦う場所でもある。
日本代表サポーターにとって、ドーハ、ジョホールバルに続く「聖地」として名が刻まれるかもしれないこの街に、僕らは6月1日、日本代表メンバーよりもひと足早く降り立った。決戦は2009年6月6日、日本時間の午後11時5分にキックオフとなる。
今回の遠征では、現地の旅行代理店にホテルや観戦チケットなどを事前に手配してもらった。滞在2日目、日本語が話せる現地の女性スタッフがホテルに観戦チケットを届けてくれたので、その場で交渉し、業務終了後にタシケントの街を案内してもらうことにした。
スタッフの名前はユリヤ。現地の大学で日本史を専攻しており、「私、古墳に興味があって、前方後円墳が特に大好きなんです」と流暢な日本語を話す、日本マニアである。日本人に馴染みの薄いこの国で、極東の地・日本に興味を抱き、日本人よりもある意味日本を知っているウズベキスタン人と出会えたことに、僕は感銘を覚えた。
彼女にタシケントを案内してもらうにあたって、最初にこうお願いしてみた。
「サッカー日本代表の練習しているスタジアムに連れていってください!」
ユリヤは若干呆れ気味だったが、僕らがサッカー日本代表に注ぐ情熱を理解してもらえたようで、事前に入手しておいた情報を元にタクシーでスタジアムに向かった。
ユリヤの案内のおかげで、無事スタジアムで日本代表の練習を見学することができた。その後、ガイドブックには載っていない地元のウズベキスタン料理屋さんに連れていってもらい、豚肉を串に刺して炭火で焼いたシャシュリクという現地料理を堪能した。こういった現地の人々との交流が、旅の醍醐味でもある。
500人以上の日本代表サポーターがタシケントに押し寄せる?
ユリヤから興味深い情報を聞いた。彼女の所属する旅行代理店を通じて、すでに日本人に対してアウェイエリア(日本代表サポーター用に特別に用意される席)の観戦チケットを300枚以上手配しているという。
日本サッカー協会が企画した「オフィシャル弾丸ツアー」(定員150人)や、日本の旅行代理店が主催する観戦ツアーに参加する人数を合算すると、500人以上の日本人がタシケントに大挙押し寄せることとなる。伝聞なのだが、驚異的な数字だ。
サッカー日本代表の人気がいまひとつ盛り上がらないとも耳にするが、ウズベキスタンという中央アジアの小国に、こんなにも多くの日本人サポーターを集結させるポテンシャルが今のサッカー日本代表にも存在することは、揺るぎのない事実である。
この「日本人大集結」は、当然ウズベキスタンにとって非常に稀なことで、ワールドカップ最終予選のイベントを切っ掛けにして、両国の人々の間で何かしらの交流が生まれれば面白いと、僕は思う。
韓国資本の企業がウズベキスタンに参入していることもあって、韓国とウズベキスタンとの間には非常に密な国交があるようだ。一方、日本とウズベキスタンの国交は特に目立ったものはない。実際、タシケントの街を歩いていて「コリアン?」と現地人に聞かれることが多い。それくらいウズベキスタンでは日本人の存在はレアなのだ。
ワールドカップ出場をかけたサッカーの試合においては、今回は「敵」だけれども、500人を超える日本人サポーターがこの地ウズベキスタンで、現地人とたくさんコミュニケーションをして、お互いの国を知ることができれば、今後の両国の交流に影響を与えることができるのではないか?
僕も、ユリヤが将来日本を訪れることがあれば、今回のお礼として、ぜひ彼女をもてなし、古墳などの古代遺跡を案内できればいいなと思っている。これからも、世界の共通言語「サッカー」をきっかけにした現地の人々との交流を大事にしながら、「世界一蹴」の旅路を踏みしめていきたい。
アシシ@タシケント