知り合いの人事マンがひどく怒っている。なんでも、大手の親会社から人員調査依頼が来て、派遣社員は何人いるかと聞かれたので300人だと答えると、全員解雇して、親会社からの中高年正社員を受け入れろと指示されたらしい。ちなみに新卒採用も凍結するそうだ。
本社の決定だが、労使協議で決められたことでもあり、労組も全面的に支持しているそうだ。さらにいえば、国も雇用調整助成金によって、出向などにより正社員の雇用を守るように後押ししている。そして、そういう雇用政策を支持しているのは有権者だ。これは日本社会全体の意向なのだ。もし切られた派遣さんがいれば、社会を恨むといい。
コスト面でも業務面でも何の合理性もないリストラ
連合はしばしば“連帯”と口にするが、その実態はこんなものである。彼らは「可哀そうね」と言いながら電話相談窓口くらいは作ってくれるが、それはプロパガンダの一環でしかなく、椅子を譲るつもりはまったくない。可哀そうねというのは本音かもしれないが、「でも、しょうがないよね」というのもまた彼らの本音である。
ところで、彼が怒る理由は以下の2点だ。
まず、なぜ人件費が安い人間を切って、高給取りの本社人員を迎え入れないといけないのか。逆に人件費は上がってしまい、そのため今期の新卒採用は凍結せざるを得ない。採用見送りは長期的には非常にマイナスとなることであり、本社の都合だけで決められても迷惑だ。
なにより、なぜ熱意も能力もあり、立派に貢献している人間を切り、赤字事業の人間を引き受けてゼロから教育しなければならないのか。要するに、コスト的にも業務効率的にも、なんの合理性もないじゃないかというわけだ。
はたしてこれは何なのだろう。自由主義でないことは間違いない。親会社の中高年と子会社の派遣社員の間で、いかなる自由競争も行なわれてはいないのだから。といって、まさか社会主義でもないだろう。
そう、これは完全な身分制である。合理的な理由もなしに、これだけ処遇に差があるのは、江戸時代の士農工商そのものではないか。