時々、小泉政権時の雇用改革に対する評価を質問される。派遣社員の増加が、同政権時の派遣法の改正(04年)とつながっているのは明らかだからだ。
実際、大量の派遣切りに際して、野党はもちろん与党の一部にまで「小泉改革が格差を拡大させた」と主張する向きは少なくない。はたして構造改革は格差を拡大させたのだろうか?
派遣法廃止を叫び失業率を上げる党よりマシ
結論から言うと、雇用改革については100点満点中の50点。ぼちぼちの評価と言ったところか。以前もこのコラムで述べたように、日本の正規雇用コストはあまりにも高すぎ、企業は新規の雇用よりも、残業や海外へのアウトソースで対応しようとする。90年代後半から国内製造ラインの廃止と海外移転を進めた製造業はその代表だ。
派遣法の改正はそのコストを引き下げ、国内に雇用を生み出したことになる。事実、小泉政権誕生時と退陣後では失業率は1%程度改善しているわけだから、実際には小泉政権は格差を縮小させたわけだ。少なくとも「小泉政権が格差を拡大させた」というロジックが成立する論拠は存在しない。
もちろん、100点満点はつけられない。彼は派遣という箱は作ったが、結局、正社員の取り分には手をつけられなかった。“格差”の正体とはこれである。50点というのは、そういう理由による。
もっとも、その後の政権、他党があまりにも落第生なので、それでも偏差値的には優等生だ。たとえば、社民党や共産党が単独与党だったとして、「正社員の賃下げ首切りを容認!」なんて言うだろうか? 絶対言わないだろう。バカだから逆に派遣法廃止なんて言い出して、失業率二桁なんてことになるのが関の山だ(というか、実際そうしようとしている)。