「過労死は自己責任」で一世を風靡したアールの奥谷社長がまた飛ばしている。全部間違いだとは言わないが、やっぱりロスジェネ問題は問題として認識されるべきだろう。僕自身も目の当たりにしていた問題だからよくわかるが、00年と06年では、就職状況に天と地ほどの差があったのは事実だからだ。
しかも日本の場合、今も変わらず年齢が何より重要な年功序列社会であり、一度新卒カードを失ってしまうと、そこから挽回するのは容易ではない。寛大な中小企業に行って成り上がったり、自分で起業して成功した人もいるにはいるが、「だからみんなそうしろ、できないヤツは自己責任だ」とやってしまうのは酷だろう。この点の認識で、この人には強い違和感をおぼえる。
もっとも、同じような違和感は、常に連合や社民党にも感じているものだ。良い機会なので、簡単にまとめてみたい。
連合の主張は「アール奥谷社長」と同じレベル
現在の雇用構造に対する「改革派」が求められている
まず、現在の雇用問題はしばしば労使対立を軸に語られることが多いが、資本階級も労働者階級も明確には分かれていない現在、それは大間違いだ。正確に言えば、現状の雇用構造に対する肯定派と改革派に分けられるべきだろう。
たとえば、連合は正社員の長期雇用自体を維持すべきと強烈に主張しているわけだから、裏返せば今の格差構造を残せと言っているようなものだ。奥谷さんと違ってなかなか尻尾は出さないが、派遣切りの最中に悪びれもせずベア要求しているわけだから、認識としては彼女と大して変わらないレベルだろう。
これは連合に食わせてもらっている社民党やその下請け活動屋・似非ユニオンも同じで、彼らは「労働者同士で連帯しよう」なんて聞こえの良いことは言うが、絶対にスポンサー様である連合の既得権見直しには言及しない。こういう連中はガス抜き専門の火消し部隊とみていい。
共産党は確信犯というより単純に頭が悪いだけだろうが、「全員正社員で完全雇用実現!」などと明らかに不可能なことをやれというのは、結果的に現状の肯定にしかならないので、これも現状肯定派とすべきだろう。
つまり、この人たちと奥谷さんは、「派遣さんは可哀想」「いや自己責任でしょ」という居酒屋レベルの議論を延々やっているだけで、結果的に「派遣さんが正社員のために切られるのはしょうがないよね」という点では一致しているわけだ。