新聞労連が、非正規雇用労働者の正社員化へ取り組むとのこと。まだ本決まりではないものの、運動方針として盛り込む予定らしい。
とても素晴らしいことだ。さらに言うなら、「その実現のためには正社員の賃金を引き下げなければならない」という点までしっかり認識している点も素晴らしい。
もっとも、彼ら自身が認めているように、これは真の改革への第一歩に過ぎない。というのも、仮に非正規雇用労働者を正社員化するにしても「じゃあいったい社内の誰に合わせるのか?」という難問が立ちはだかるのだ。
たとえば。A新聞社が傘下の『週刊A』の記事半分くらいを、1ページ3万円でフリーライター達に書かせていたとしよう。人にもよるが、そこそこ仕事をこなすフリーライターで年収400万くらいだ。さて、彼を正社員の同僚に合わせようとした場合、合わせる対象が25代の若手社員なら600万程度ですむが、35歳の中堅記者に合わせるのなら1200万もの高給を支払わなければならない(架空の新聞社です。けしてイニシャルなどではありません)。
要するに、日本では仕事内容ではなく年齢で処遇が決まる年功序列が基本なので、いざ正社員登用しようとすると、処遇の基準にみんなが頭を抱えることになるのだ。
解決のキーワードは「職務給」
もちろん、解決策は明らかで、年齢ではなく仕事内容で処遇を決められるようにすればよい。そしてそれこそ、僕がいつも口をすっぱくして言っている“職務給”というものだ。ちなみにヨーロッパで同一労働同一賃金が実現できたのも、あちらでは昔から職務給が一般的だったから、基準価格が最初から存在したのだ。
では「仕事に値札をつける」ためには何が必要か? 正社員の賃金を柔軟に見直しできるようにする流動化である。貰いすぎている人の賃下げなくして、同一労働同一賃金なんてありえないのだ。
と、まあいろいろ書いたが、素直に問題の存在を認めた新聞労連は偉いと思う。少し見直したよ。「労働者同士、対立ではなく連帯しよう!」と言って景気が良い時は流動化に反対しておきながら、この状況でちゃっかりベア要求する某利権団体会長は、新聞労連のつめの垢でもせんじて飲むといい。
城 繁幸