「実はねえ、私たちの一番強力な営業ツールってケータイなんですよ」
偶然、乗り合わせたタクシーのドライバーさんは、そう言って運転席に取り付けたケータイホルダーを指差しました。
「ただ流しているだけではお客をつかまえられない」
最近は、GPSカーナビが搭載されているタクシーが増えています。これは、ただの道案内のみならず、予約客にもっとも近い場所にいる空車をあてることで、配車の効率化をはかっているのです。
お客さんをつかまえるのに難儀しなくなった反面、
「うかつにトイレやコンビニ、牛丼屋なんかにも寄れなくなった。GPSで自動的に配車されてしまうから、車から離れられないんですよ。無線の頃は、切っておけばよかったんだけどさ。道路脇に止めて仮眠するなんて、もってのほかになっちゃった」
といった"苦労話"もよく聞くようになりました。なのに、ケータイ?
「ウチらみたいな小さい会社は、カーナビといっても地図データだけのヤツ。予約は無線のままなんですけど、不況でタクシー利用が減ってるところへ、大手さんがGPSで配車しちゃうし、規制緩和でタクシーの台数が増えちゃったもんだから、ただ流しているだけ、駅前につけているだけではなかなかお客さんをつかまえられないんですよ」