「休憩時間になると、まずほとんどの人がケータイを取り出してカチカチやってますね」
若手社員向けのコミュニケーション研修を行っているKさんは言います。
「食事の時には全員がケータイ片手に食べてる」
「一昔前なら、タバコを吸いに行く人が多かったんですが、いまはケータイの電波が届く場所へと、一斉に移動していきますよ。合宿研修をやっている同業者なんかは、毎朝ケータイを預かり一日のカリキュラム終了後に返すんだそうですが、夜の食事の時には全員がケータイ片手に食べてる、って言ってました(笑)」
これがケータイ依存か、とKさんは背筋が寒くなる感じがしたそうです。それにしても、ケータイで何をやっているのでしょう? Kさんも、そう思ってそれとなく聞いてみたとか。
「通話の場合は、だいたい顧客や担当先と連絡をとっているようでしたが、そんな人は稀。メールのチェックややり取りのほかに、ゲームをやっていたり、サイトを巡回していました。なかには、ワンセグでテレビを視ている人もいましたよ」
Kさんの研修は半日のものなので、試しに受講者が帰っていく姿を見ていたところ、やはりほとんどの人がケータイを操作しながら帰っていったそうです。
「驚いたのは、若い社員を迎えにくる人事や総務の課長さんとか、40代、50代の人までもが、待ち時間や帰る際にケータイ片手だったこと。まあ、仕事上の連絡をしているのだろうとは思いますが、ケータイ依存は決して若い人だけのことでもないんじゃないか、って思いました」
若い人がやっているから真似してみたのか、操作や理解が簡単になったからハマっているのか。いずれにせよ、上司である中高年がケータイ依存なら、若手も「ケータイ依存で何が悪い」と思ってしまうでしょう。
そして、親や祖父母がケータイ依存なら、子供も真似てしまうでしょう。子は親の背中を、後輩は先輩の背中を見て育つと言いますが、この調子ではしばらくケータイ依存はなくならないかもしれません。
井上トシユキ