世界結核デーとなる2017年3月24日、医療・人道援助を行っている国際NPO「国境なき医師団(MSF)」は、半世紀ぶりに登場した2つの結核治療薬が、必要な患者に届いていない現状を危惧する声明を発表した。
結核がまん延している国での薬事登録が進んでいないことや、高価格が原因だ。
製薬メーカーの全面協力が不可欠
MSFの発表資料によると、従来の治療薬に耐性を持つ「薬剤耐性結核(DR-TB)」を治療できる新薬は、3年前に米ジョンソン・エンド・ジョンソンから「ベダキリン」、大塚製薬から「デラマニド」が発売された。これら新薬の効果が見込めるDR-TB患者は年間15万人いるが、実際に治療を受けたのはそのうちの5%未満で大半が新薬を利用できていない。
普及が進まない要因の一つとしてMSFが挙げているのが価格だ。例えば、大塚製薬は世界抗結核薬基金を介し、結核がまん延する東南アジアや西太平洋地域の低・中所得国向けに販売価格を低く設定している。それでも6ヵ月の治療コースで約18万9700円となり、さらに既存の治療薬と常に併用されるため治療費の合計額は患者にとって高額すぎると指摘する。
新薬の普及を進めるため、MSF日本会長の加藤寛幸は発表の中でジョンソン・エンド・ジョンソンと大塚製薬両社に対し、結核の高まん延国における新薬の薬事登録を急ぎ、特許期間中でも対象となる医薬品の開発に着手できる「医薬品特許プール」への自発的なライセンス提供を進めてほしいとコメント。
ライセンス提供によってジェネリック薬メーカーがこれらの新薬の生産を開始することができ、低・中所得国でも手ごろな価格で普及させることができるとしている。