親の言うことを聞かず、じっとしていられない。気に障ることがあるとすぐ乱暴になってしまう――。親を困らせる子どもの発達障害「注意欠如・多動性障害」(ADHD)の原因はよくわかっていないが、脳の障害であるとの研究成果が出された。
オランダ・ラドバード大学などの研究チームが医学誌「Lancet Psychiatry」(電子版)の2017年2月15日に発表した。ADHDの子どもを脳MRI(磁気共鳴画像)で調べた結果、脳の5領域の容積がほかの子どもに比べ、明らかに小さいことがわかったという。
「しつけ」が原因ではと悩む親が多い
ADHDは、(1)忘れ物、なくし物が多いなどの「不注意」、(2)落ち着いて座っていることができないなどの「多動性」、(3)欲しい物があると激しくダダをこねるなどの「衝動性」が特徴。18歳以下の約5%にみられる。落ち着きがなかったり癇癪を起こしたりといった、わがままに見える行動から、幼稚園や小学校で他の子どもとトラブルを起こしやすい。子どもの「性格」や親の「しつけ」が原因と思われがちで、悩む親が多い。今回、育て方の問題ではなく、先天的な脳の機能障害によるものということが明らかになった。
同誌の論文要旨によると、研究チームは世界各国のADHDの専門家の協力を得て、欧州諸国や米国、中国、ブラジルなど各国の23の施設からADHD患者1713人(4~63歳・平均年齢14歳)の脳MRIデータを入手した。そして、ADHDではない同年代の1529人の脳画像と比較、分析した。そして、情動や認知機能をつかさどり、ADHDとの関連が考えられる扁桃体や海馬など大脳皮質下の7領域の容積を調べた。すると、ADHD患者はそうでない人に比べ、扁桃体や海馬など5つの領域の容積が明らかに小さかった。
実は、これまでの研究でも、ADHD患者は脳領域の一部が小さいことが知られていたが、サンプル数が少ないという限界があり、はっきりしていなかった。今回ほどの大規模な調査は初めてだという。研究チームは、論文要旨の中で、「ADHDは、脳領域のいくつかの領域で発達が遅れる脳障害と考えられます。この知見を患者に対する理解を深め、偏見を払拭するために役立ててほしい」とコメントしている。