恋愛が苦手な「草食男子」が増えているが、自然界にも求愛行動はするが、交尾ができないオスがいる。「プラトニック突然変異体」と呼ばれるが、東北大学の研究チームが、ハエを使った実験でなぜ交尾をしないのか謎を突きとめた。
「幸福ホルモン」とも呼ばれるセロトニンの原料になるアミノ酸を食べさせると交尾するようになった。人間の「プラトニック男子」も「肉食男子」に変えることができる?
自然界にいる「プラトニック突然変異体」とは?
この研究をまとめたのは、東北大大学院生命科学研究科の山元大輔教授のグループ。英科学誌「Nature Communications」(電子版)の2016年12月13日号に発表した。同大学が12月12日付で発表した資料によると、動物のオスの求愛行動は交尾という「目的」を達成するための手段だが、求愛ばかりしていて交尾をしないオスの存在が知られている。ショウジョウバエの「プラトニック(platonic)」と名付けられた突然変異体もその1つだ。山元教授は23年前からこの「プラトニック」の研究を続けており、今回、謎解きを試みた。
まず、「プラトニック」にはスクリブラーと呼ばれる遺伝子が働かなくなっていることを突き止めた。スクリブラーは、体の形づくりを根幹で支える骨形成因子の作用を仲介する遺伝子で、人間にも存在する。スクリブラー遺伝子が働かないと、腹部にある感覚と運動を司る神経節に存在している数個のセロトニンを合成する神経細胞が、成虫になる前に失われることがわかった。
そこで、セロトニンの原料となるアミノ酸の一種「5-HTP」を、「プラトニック」が成虫になってから食べさせたところ、なんと交尾をするようになったという。つまり、幼虫の段階でスクリブラー遺伝子が働かないと、交尾に必要な神経組織が発達しないため交尾できない。しかし、成虫になった後でも5-HTPを食べさせると神経組織を回復し、交尾できるようになるのだ。